女優の安藤サクラがきょう2月18日、38歳の誕生日を迎えた。その活躍は周知のとおりで、昨年(2023年)も、民放ドラマ初主演となった『ブラッシュアップライフ』をはじめ、映画でも『怪物』『ゴジラ-1.0』『BAD LANDS バッド・ランズ』など話題作に立て続けに出演した。

 もはや日本を代表する女優のひとりといっても過言ではない。すでに10年前には、映画誌『キネマ旬報』が識者からアンケートをとった『オールタイム・ベスト映画遺産 日本映画男優・女優100』(キネマ旬報社、2014年)で、若手女優では唯一、しかも田中絹代と夏目雅子と同点の8位にランクインしていた。

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華麗なる芸能一家

 安藤はよく知られるように、父は俳優の奥田瑛二、母はエッセイストの安藤和津、4歳上の姉は映画監督の安藤桃子という芸能一家に育った。両親に言わせると、彼女には幼いときから俳優の素質があったようだ。

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 母によれば、彼女が5歳のとき、父の出演する『幕末太陽伝』の舞台稽古を見に行った際、突然、侍に扮した父を指さし、「チャクちゃん、あれになる」と言ったという(『LEE』2012年9月号)。本人にはその記憶はないものの、《ただ、この舞台の途中でかかったジャニス・ジョプリンの曲にすごく興奮したことと、舞台の裏のあの独特の匂いを好きだと思ったことは、はっきり覚えています》という(『キネマ旬報』2014年11月下旬号)。

 父の奥田は、彼女が小学5年生のとき、「学芸会で『夕鶴』の主役に決まったので、演技をちょっと見てほしい」と頼まれたことがあった。このときを振り返った奥田いわく《女房にも10分でいいからと言われたもんだから、10分だけだぞ、と。でも、そのうち僕もどんどん真剣になっちゃって、1時間経ち、2時間経ち。ついに僕が大声で怒鳴った言葉が、「だめだー! そんな学芸会みたいな芝居してんじゃねえ!」(笑)》(『キネマ旬報』2013年10月下旬号)。

 一方、母は『夕鶴』での演技に感動し、「サクラはもう絶対にこの道しかない」と確信したらしい。これと前後して、安藤は父の出演する舞台や映画にも子役として出演している。もっとも、彼女自身は小学校低学年のころ、作文に将来の夢を「女優」と書いたところ、みんなから「女優さんになりたいなんてすごいね」などと言われたのが恥ずかしくて、それ以来、家族にもその夢を口にしないようにしたという。