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 こうして中学卒業後、事務所に入ったものの、福岡に住んだのは上京前の1年ほどで、それまでは鹿児島でファーストフード店などのバイトをしながら通っていた。前出のドラマ出演が決まって東京に出るときも、「東京に行ってもマックだったら働けるな」と思っていたぐらい気負いはなかった。

「3年ぐらいで消えるだろうから、そろそろ…」

 ドラマで一躍注目を集め、デビュー曲「STARS」もヒットする。さらに翌2002年にリリースした1stアルバム『TRUE』もミリオンセラーとなり、同年末にはNHKの『紅白歌合戦』にも初出場した。しかし、中島はけっして浮かれることはなかった。彼女は後年、当時をこんなふうに振り返っている。

デビュー曲「STARS」(2001年)

《何もわからないままやっていたので、売れようが売れまいが、嬉しくもなんともなかったんです。私が書いた作品ではないし、私が考えたことでもなんでもないし、『よっしゃあ、私、やったぜ』みたいなのは全然なかった。むしろ、3年ぐらいで消えるだろうから、そろそろバイト探さなきゃと思っていたぐらいでした。そんな簡単な世界じゃない、という思いもあったんです》(『AERA』2019年12月16日号)

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 デビューしてからというもの、ドラマの撮影やレコーディングに追われ、そのあいまには取材を受けたり、ドラマの劇中で歌う曲を覚えたりと、寝る間もないほど多忙な日々が続く。あまりに忙しくて、最初の1年くらいは、自分がどんな立場にあるのかもよくわかっていなかったという。このスケジュールがずっと続くのであれば、体がもたないと薄々気がつき始めたころ、1ヵ月ほど休みをもらい、初めてニューヨークに行った。そこでようやく、自分の立場のありがたみがわかって、歌にちゃんと向き合えるようになったり、気持ちを切り替えることができたという。

代表曲「雪の華」(2003年)は、韓国ドラマ『ごめん、愛してる』の主題歌として披露された

大ヒット映画の裏側で

 当初は、歌って踊れるアイドルとして売り出されたが、彼女にはどうも噓をついているみたいで心地悪かった。3年ほどはお仕着せのヘアメイクや衣装で活動していたものの、やがて《このままだと自分が我慢できなくなるから、早めに対処してしまえと思って、髪の色を変えたんです》(『週刊朝日』前掲号)。所属事務所には黙っての強行突破であったという。

 アイドル路線から脱却してからも、「WILL」(2002年)や「雪の華」(2003年)、「ORION」(2008年)などヒットが続いた。そのなかで中島にとって大きな転機となったのは、2005年、映画『NANA』に宮﨑あおいとともに主演したことだという。矢沢あいの人気コミックの映画化である同作で、中島はロックバンドのボーカルとしてデビューを目指す大崎ナナを見事に演じきり、大ヒットとなる。