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40歳の誕生日に再婚

 私生活では昨年、40歳の誕生日にギタリストの馬谷勇と再婚している。馬谷はバンドメンバーとして彼女を長らくサポートしてきた。彼にかぎらず、中島のスタッフへの信頼は厚く、彼女のなかでは、自分は表に立つだけで、「中島美嘉」をつくっているのは大勢のスタッフだという意識が強い。チームを組むスタッフたちとは、他愛もない話で盛り上がったり、ささいなことで笑ったりすることも多く、世間で思われているようなクールな自分でいなくて済むのでラクだという。そうしたチームの存在が、昔もいまも仕事を続けるモチベーションになっているようだ。

 それもあってか、中島自身、裏方になりたいという夢を抱き続けている。ある雑誌の取材中には、《もし、いま裏方にまわっていいと言われたら、はい、もう喜んでという感じです。(中略)詞はもちろん、ライブの構成、この企画にはこの人を起用して、この漫画を原作にして映画を、とか。そういうことを考えているとわくわくする》と語った(『AERA』前掲号)。ただ、つきあいの長いレコード会社のスタッフはこの発言を聞くや、彼女が歌っているおかげで救われている人は多いのだからと、できればずっと表舞台に立ち続けてほしいと釘を刺した。

©文藝春秋

 もちろん、それは中島も重々承知している。彼女としても、自分の歌を聴いて「救われた」とか「気持ちが前向きになった」という言葉をもらうことがあったから、歌を続けてこられたという。逆に《そういう、ファンの方達との心の交流のようなものがなかったら、私は今頃、この世界にはいなかったと思います》とまで語っている(「CREA WEB」前掲)。

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 表舞台に立つ者として、ここ数年新たな挑戦も目立つ。2019年にはミュージカル『イノサンmusicale』で初舞台を踏んだ。また、一昨年の2022年には初めて自身でプロデュースし、曲もすべて自ら作詞・作曲したアルバム『I』をリリースした。

「今の私だからこそ歌える楽曲の新しい側面」

 他方で、往年の自身の楽曲を新たな形で披露する機会も多い。一昨年にはYouTubeチャンネル「With ensemble」に登場し、オーケストラとのコラボレーションにより「ORION」を歌い上げたかと思えば、昨年は神戸でのアイスショーにゲスト出演し、彼女の歌う「GLAMOROUS SKY」に合わせ、プロスケーターの羽生結弦が氷上を華麗に舞った。

 ベテランの歌手には、過去の歌を求められると「いまもいい曲があるのに」と抵抗感を抱く向きもあるなかで、中島は《私は“今の私だからこそ歌える楽曲の新しい側面”を表現する貴重な機会だと思っています》として(「Billboard JAPAN」2022年12月21日配信)、リメイクに積極的だ。たとえば「雪の華」は、若いころは歌詞で描かれる関係性などよくわからなかったところも、歌い続けるうちに自分のなかで解釈が決まってきたという(「Real Sound」2022年3月20日配信)。

 こうした最近の活動を見ていると、中島は年齢を重ねることを楽しんでいるようにも思える。それも表舞台に立ち続けているからこそ。この分だと、まだまだ彼女が裏方に回ることはなさそうだ。