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現地取材で「近くに砲弾が落ちないことを祈りながらタイヤ交換」…“ロシアのウクライナ侵攻”から2年の今

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2024/02/24

genre : ニュース, 国際

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スーパーには豊富な食材や食品が並んでいた

 街にいると遠雷のようにウクライナ軍がロシア軍に向けて砲撃を行っている音が聞こえた。それに空襲警報もよく鳴った。滞在中の夜中に2回ほど連続で遠くに爆発する音を聞いた。前回の取材では私の滞在していたホテルの2キロ離れた場所に夜中にミサイルが着弾し、衝撃でベッドから体が浮いたことがあった。

 取材期間中に滞在するアパートを確認し、食料を買いにスーパーマーケットへ。前線近くの街ではあるがスーパーには豊富な食材や食品が並んでいた。買い物客もやはり軍人が多い。酒類売り場にはノンアルコール飲料しか販売されていなかった。バーなどでは飲めるようだ。アルコール依存症もウクライナでは以前から問題となっている。

前線に近い街でもスーパーには豊富な食材と食品が並んでいた

 ウクライナ東部も言ってしまえば田舎である。娯楽は少ない上に戦時下でいつ攻撃されるかわからない、というストレスを解消する手っ取り早い手段は酒である。前回の訪問時にウクライナ北東部の都市ハルキウで砲撃された場所を取材していると、攻撃を受けた直後にもかかわらず、周りの公園では近くの住民が昼間からウォッカをあおっていたのを見かけた事がある。

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迷彩柄にペイントされた車でドンバスを取材

 今回の取材の手伝いをお願いしたのはウクライナ人のアンドリだ。筆者がウクライナ取材を始めた時から世話になっているウクライナ人だ。本業は映像関係のプロデューサーでロシアの侵攻以降、海外メディア向けの案内の仕事をしている。2022年4月に首都キーウを包囲していたロシア軍が撤退した頃のブチャやイルピンなどの取材を手伝ってもらった。現在は激しい戦闘が行われているウクライナ東部の事情にも詳しくなっていた。

迷彩柄にペイントされたバン

 アンドリの用意した車は全身を迷彩柄にペイントしたバンだ。見た目はいかついが、戦時中のウクライナでは全身を迷彩にペイントしたSUVやバンをよく見かける。前線を行き来する軍人が乗っているのがほとんどだが、アンドリのようなフィクサーや軍を支援するボランティアが乗っていることもある。それはウクライナ東部の郊外は広大な見晴らしのいい平原で、ロシア軍に発見されにくくするためだ。