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 また欧米の兵器支援の停滞も問題となっている。兵器の供給がもっと早ければ去年の反転攻勢の結果は違っていたのではないかと前述したが、現場にいる兵士たちも皆口を揃えて兵器の到着を待ちわびていた。特に砲弾不足が深刻らしく、第80空中強襲旅団、司令官のアレクサンドルは「1年前は1日200発消費出来ていたのに、今は1日15発しか供給されていない」という。

ドローンから送られてくる映像をもとに砲撃を指示

 バフムト近郊の最前線の後方、砲兵部隊の取材をようやく許可された。軍の車両に乗せてもらい、穴だらけのぬかるんだ道を猛スピードで進む。携帯の電源は切るか、航空機モードにする。もちろん防弾ヘルメットとベストも着用しなくてはならない。司令室にはテスラ社のスターリンクのモデムが設置され、快適なネット環境があった。10インチのタブレットには前線で飛ばしているドローンの映像が映し出されていた。バフムト方面から接近してくるロシア兵の動きを24時間監視しているそうだ。

 ドローンから送られてくる映像を見せてもらった。画面の奥にバフムトの町が見える。カメラがズームするとウクライナ軍の塹壕に人がいるのがわかる。かなりはっきりと映っている。ここまで見られているのがわかると恐ろしく感じる。この映像を元に砲撃の指示を出しているそうで、砲撃が成功したかどうかもここで確認している。

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ロシア軍では、国内の刑務所から囚人を勧誘

 ロシア軍の攻勢で最近多いのは、兵士の命をなんとも思っていないような肉弾突撃だという。突撃には元受刑者で構成された部隊が使われているらしい。ロシア軍ではロシア国内の刑務所から囚人を勧誘している。一定期間の兵役を終えれば恩赦で自由になれるという。ロシアの民間軍事会社ワグネルの創始者プリゴジンが始めたことだが、ワグネル解体後にそのままロシア軍に引き継がれている。

 最近になって一定期間の兵役は無くなり兵役は自動更新になったと報道された。つまり戦争が終わるか、死ぬか。そうでなければ軍を離れることが出来なくなったということだ。しかも、ろくな訓練も受けさせず、ろくな兵器も持たせずに肉壁として突撃させられる消耗品扱いだ。もし前線から逃げ出そうとすれば監視している兵士から背中を撃たれたり、最近では突撃命令を拒否した兵士を首吊りで処刑した写真がSNSで流れてきた。もう無茶苦茶である。