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 無線から音声が鳴ると司令官がタブレットの映像を確認した。ロシア兵が近づいてきたらしい。ちょろちょろと動く人影が確認された。司令室がバタバタと騒がしくなる。待機していた兵士が外へ飛び出し、大砲に走る。司令官の指示のもと、照準を合わせ砲弾を込めた。トランシーバーで司令官が砲撃命令を下すと砲弾を発射した。すぐさま砲弾を装填し、照準を合わせ直し、発射する。それを何度か繰り返した。司令室へ戻ると司令官が「負傷させた」と言った。司令室は落ち着きを取り戻していた。

接近してくるロシア兵に向かって砲撃を加える

今後の世界の命運はウクライナが握っている

 現在、ウクライナ軍は防戦に回っている。砲弾不足により攻勢もかけられず、前進してくるロシア軍を止めるので精一杯だ。今は追加の兵器支援が届くまで耐えるしかない、といった状況だろう。兵力不足は総司令官交代による予備兵力の再編で当面は様子を見るといった状況か。今ウクライナ軍で最も期待されているのは航空戦力のF-16戦闘機が投入されることだ。司令官のアレクサンドルも「F-16があれば地上部隊の攻勢が有利になるはずだ」と期待を寄せる。

 ロシアがウクライナに侵攻を開始して2年が過ぎた。ロシアの侵攻の意図が無くならない限り、停戦はロシアを有利にさせるだけで、ウクライナは戦い続けるしかない。また、ウクライナが戦うことを諦めれば、ロシアの脅威がヨーロッパに及ぶことが懸念されている。隣国の日本も他人事ではない。アメリカの支援も停滞しつつある。もし、トランプ氏が再び大統領に返り咲けば、さらなる状況の悪化が懸念されている。今後の世界の命運はウクライナが握っているといっても過言ではない。

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写真=八尋伸