新しいモノがもてはやされる世の中で、「古きよき時代」を愛してやまない者たちがいる。往年の名車を現代によみがえらせる、旧車オーナーたちの素顔とは?

 今回は「Nostalgic 2days 2024」出展者のなかから、1959年式のBMW 600に乗る入佐さんをご紹介。

BMW 600の運転席に乗り込むオーナーの入佐さん

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創意工夫は不便から生まれる

 もともと私はBMWの大ファンで、色々なモデルを乗り継いでいたんですよ。古い車に興味を持ちはじめたのは、1988年式の初代M3に乗るようになってからですね。

 それ以来、BMWの歴史にも関心が向き、イセッタという変な車があったということを知って……なんとも個性的な存在感に、どうしても乗ってみたくなったんですよね。

1950年代に流行した「イセッタ」のストレッチモデルとして発売された「BMW 600」

 手に入れるまでにはかなり苦労しましたが、やっぱり乗ってみると非常に面白い車で、そこから私自身の嗜好も大きく変わりました。今ではメッサーシュミットのKR200やツェンダップのヤヌスなど、1950年代のマイクロカーを集めているんですよ。

 どれも古い車ですから、それなりに手はかかりますね。この車はシフトレバーが折れやすいので、シフトチェンジのときにはなるべく根元を持って操作したり、予備のレバーを自作したり。色々と工夫しながら乗っていますよ。

幼児の描く車のような愛らしいボディライン。一見車両の前後がわかりにくい

 イベント出展のため遠出する際には、いつ何が起きるかわかりませんから、宿は必ず積載車が入れるところを選ぶようにしているんです。そのせいで妻の「この温泉に泊まりたい」といった要望を何度もフイにしていますが……もう私の趣味に関しては、妻は完全に諦めている様子ですね。

 もちろん最初の頃はかなり文句を言われましたけど、とにかく大事なのは耐えることですよ。どれだけ文句を言われても、ジッと我慢していれば、そのうち天国への道が開けますから。

運転席はクルーザーのコクピットを思わせる

 ただ旧車に乗るためには、それなりに心構えが必要だろうと思います。たとえばブレーキですね。旧車乗りの多くは、走行中にスコーンと床までペダルが抜けてしまう経験を一度はしていますから、そういう想定外の事態につねに備えておく必要はありますね。

 でもこれは結構、ボケ防止にも効果があると思うんですよね。最近は年配の方がペダルを踏み間違えてしまう事故をよく耳にしますけど、普段から「車は当たり前に動くものではない」と意識していれば、パニックに陥ることもないんじゃないかなと。

BMWを8~9台ほど乗り継ぐうち、かつて生産された「変わり種」の車種に行き着いた

 そういう面でも、なんでもかんでも便利になる時代がいいわけではないんでしょうね。みんな旧車に乗るべき、とまでは思いませんが、高齢の方がマニュアル車に乗って注意力を高める、なんて対策も案外有効なんじゃないかなと思いますよ。