現在放送中のドラマ『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』(略称『おっパン』。東海テレビ制作・フジテレビ系)で、富田靖子と松下由樹が約40年ぶりに共演している。このドラマでは、原田泰造演じる主人公のサラリーマンが、古い価値観を持つがゆえ家族にも嫌がられていたところ、ゲイの青年と出会い、自らの持つ常識のアップデートを迫られる。松下が演じるのはその青年の母親である獣医師、富田は主人公の妻だ。

12万7000人から選ばれたヒロイン

 二人が約40年前に共演した作品は、いずれにとっても俳優デビュー作となる映画『アイコ十六歳』(1983年)である。名古屋を舞台に弓道に明け暮れる女子高校生・アイコを主人公とした同作では、生徒役の出演者を出演者を全国オーディションで決めた。富田と松下はこのとき、12万7000人の応募者のなかから、各地での予選を勝ち抜いて最終的に役に選ばれた。

富田靖子 ©時事通信社

 もっとも、松下は最終オーディションで選ばれたものの、主演はそこにいたっても決まらなかった。このとき製作を務めた大里洋吉(現・アミューズ代表取締役会長)が後年明かしたところでは、選考が難航するなか、机の上にあった一人の少女の写真が目に入った。それが当時中学2年生の富田であった。学年は役より下だったが、大里は勘が働き、彼女の地元・福岡まで会いに行くと、しぐさや発言がアイコのイメージに合致し、「この子でいきたい!」と即決したという(「映画.com」2018年3月3日配信)。

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 今回の共演に際しての対談で、松下はデビュー作撮影時の富田について、役に入り込まないといけないという思いが強く、スタッフや監督も彼女の気持ちが入るまで粘り強く待ってくれたと振り返る。そのうえで《普通耐えられないじゃない、待たせるって》と松下が言うと、富田は《もう、耐えられなかったよ~。つらかったよ~》と返している(「フジテレビュー!!」2024年1月19日配信)。それでもやりきったという充実感を二人とも味わったようだ。

映画『アイコ十六歳』(1983年)

 なお、厳密にいえば、富田と松下の今回の共演は「40年ぶり」ではなく、この間、1991年公開の映画『新・同棲時代』でも共演していた。これは柴門ふみの原作コミックを、3話オムニバス形式で映画化した作品で、二人は相楽晴子とともに各話でそれぞれ主演を務めている。同作はのち1998年にも同じ形でドラマ化もされ、富田は再び出演したが、このときの役は奇しくも映画版で松下が演じた役であった。

「まだ“女”に魅力を感じてないから」

 富田靖子は松下由樹と同学年だが、富田は早生まれで、きょう2月27日に55歳の誕生日を迎えた。人気の面では主役でデビューした富田のほうが先行し、『アイコ十六歳』のあとも、大林宣彦監督のいわゆる尾道三部作の最後の作品となる『さびしんぼう』(1985年)、人気CMディレクターの市川準の初監督作品『BU・SU』(1987年)などの映画に出演し、話題を呼んだ。