「和菓子のアン」シリーズ、『ショートケーキ。』など、甘いもの、美味しいものにまつわる物語で知られる坂木司さんの最新作『うまいダッツ』はやはり、美味しいもの――「おやつ」がテーマの作品集です。刊行にあたり、坂木さんに本書への思いを綴っていただきました。

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すべての人が楽しいおやつタイムを過ごせますように

 このお話は、コロナの感染率が高く誰かと食べ物をシェアするのが難しい頃に書き始めました。日常の中にたくさんの予防措置があり、それを守りながら暮らすことは必要とわかっていても息苦しく、その反動のせいか「とにかく楽しいお話が書きたい」となったときに出てきたのがおやつ部の仲間たちです。

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『うまいダッツ』(坂木司 著、文藝春秋)

 誰かとおしゃべりをしながらだらだらとお菓子を食べる。そんな他愛もない楽しさ。でもそれがかなわない状況はコロナ下だけではなくいまだ存在します。病気や戦争や災害といったどうしようもないこともあれば、職業柄、あるいは家庭の事情で難しい場合もあるでしょう。でもいつか、その楽しさを分け合えるようになりますように。そう思いながら、おやつ部のみんなを書きました。

©shironagasukujira/イメージマート

 ちなみに実在のお菓子にここまで焦点を当てて書いたのは、叶うことなら同じお菓子を一緒に食べることができたらと思ったからです。期間限定や地域限定をのぞけば、多くのお菓子がお近くのスーパーやコンビニで手に入るものばかりなので、もしよければおやつ部と一緒にだらだら読みながら食べていただけると嬉しいです。

 あなたとあなたの周りの方たちが、楽しいおやつタイムを過ごすことができますように。

ロッテの生チョコパイで指をべったべたにしながら   坂木司

「あとがき」より抜粋

うまいダッツ

坂木 司

文藝春秋

2024年3月8日 発売