福士 ええ(笑)。小澤さんもですが、俳優の皆さんがアドリブを巧みに入れてくれるので、次に何が出るかと待ちたくなるんです。実際、清水さんと芋生さんが連絡先を交換する場面なんかでは、ぎこちなさに真実味が表れると思ったので、長めに撮らせてもらいました。
自身が俳優だからこその演出も
――後半、いきなり時間軸が変わる思い切った演出がありますが、あれは脚本通りだったんですか?
福士 はい。あの場面転換は、伊澤さんのお芝居のおかげでビシッと決まりました。元々ストリート系でアクションをこなす女優さんならではのシャープさが光っています。
小澤 それから清水さんが独り絵を描く場面。あそこも素晴らしかったなあ。
福士 俳優がお芝居で絵を描くと、つい動きだけに集中しがちなんです。そこであの撮影の時は清水さんの傍に僕がいて、「怒り」「悲しみ」とか、キーワードを呟いてみました。音声を同録しない場面だったから。清水さんがそれを受けてお芝居してくれたんですよ。
小澤 あそこは絵を描く行為が感情の奔流となってたし、それ自体がヒロインへの祈りなんだよね。
撮り逃しの後悔もあるけれど…
――「監督・福士蒼汰」の、現時点での小澤さんの評価はいかがですか?
小澤 僕は共演経験がないから純粋に監督としてしか知らないんですよ(笑)。でも、デビュー作を濃密な作品に仕上げ、現場でロジカルに説明出来て、笑顔も絶やさない。監督向きの資質を持ってますよ。
福士 照れちゃいますよ(笑)。だけど、ずっと俳優として現場を見てきたので、演出という仕事はとても面白かったです。終わってみて「あそこを撮れば良かった」とか、撮り逃しの後悔もあります。だけど、小澤さんのお芝居をはじめ、常にスタッフとキャストの化学反応を感じられたので最高の体験でした。2作目も撮れたらいいなと思うくらい。