「瀧本ゼミ」面接はマッキンゼー流で
鈴木 瀧本先生とこうして対談することになるなんて不思議な感じがしますが、私はもともと株式投資に興味があって、企業分析の方法が学べそうな「瀧本ゼミ」に入りました。東大の新歓期って400枚近くのビラが新入生に配られるものなんですけど、中でも目を引いたのがゼミのビラ。「自分のスキルを高められます」ってことを強く押し出していて(笑)。
瀧本 クイズ研究会じゃなくて、こちらに興味を持っていただいたのはありがたいですよ。ゼミ面接のとき、鈴木さんに「あなたは当たり障りのないことを言う人ですね」って言ったの覚えてる?
鈴木 覚えてます。法学部の推薦入試でもあんなこと言われませんでしたから、刺さりましたね。もっと内容のある人間にならないといけないな……って思いました(笑)。
瀧本 僕が元々勤めていたマッキンゼー流の面接をしてるんですけど、完全な人間なんてまずいないから。足りないところは学習して伸ばしていく人だろう、という人にゼミに入ってもらっています。
鈴木 ゼミは学生が自主的に開催しているもので、瀧本先生には3回に1度くらいのペースで参加いただいてますよね。企業分析を発表し合うものなんですけど、東大ではもう何年くらいやっていらっしゃるんですか?
投資とは「考える」ことの実践
瀧本 7年くらいになるかな。まだ世の中に注目されていない企業を探してきて、そこがどういう理由で投資に見合うか、成長見込みの理由は何か、発表して討論し合う形式で。目的はもちろん金儲けではなくて、自分でテーマを見つけ、仮説を立て、リサーチして、説得するという「考える」ことの実践です。例えばリサーチ一つ取っても、企業のIR部門に電話することもあれば、店に行って発表資料と事実のすり合わせをすることもある。アクティブにやれば、企業取材に近くなることもある。
鈴木 私もゼミの発表をしながら思いましたが、企業分析、株式投資って調べて考える実践の連続ですよね。昨年、私はR社という企業について発表しました。元々はBtoBの衣服の通販システムを構築する銘柄だったんですが、そこから金融分野にも事業を拡大しつつあるようなので注目したんです。
瀧本 なるほど。
鈴木 こういう企業の「転換期」をうまく見つけられると「面白い!」って思いますね。なんか、『四季報』見ながら宝探ししてる感覚です。まず興味のある業種に絞って、業績伸び率の大きいところにスクリーニングをかけて……。
瀧本 『東大王』の鈴木さんを知っている人からすると、鈴木さんの別の顔って感じがするかもしれないね(笑)。
「転換期」を見つける目
鈴木 先生は大学で教える一方で、投資家としてもお仕事をされていますが、そもそも投資家になるきっかけは何だったんですか?
瀧本 法学部の内田貴先生のもとで民法を専攻して、そのまま東大に残って院で助手をやっていた時は、他にお金を使う生活もしていなくてね。じゃあ父親がたまにやってた株式投資でもやるかと。それで『四季報』を朝からずっと読んで、気がついたらメシを食うのも忘れて、窓の外が暗くなってる……みたいな日もありました。
鈴木 うわあ……。最初に投資した銘柄は何だったんですか?
瀧本 NECシステム建設と宇部日東化成。ちょうどウィンドウズ95が出た頃で、大半の人はメモリの増設を見込んでメモリメーカーの業績がよくなるだろうって方向に投資した。でも僕は、メモリはコモディティ化するだろうと考えたんです。
鈴木 商品として一般化してしまって、価値もそれ以上高くならないだろうと見通しを立てたんですね。
瀧本 そう。僕はウィンドウズ95そのものではなく、むしろ95の登場によってインターネット接続が標準化された点に「転換期」を感じたんです。これで通信インフラが爆発的に需要を増すだろう、そう考えて通信工事をやってる会社でよさそうなところを探した。それがISDNの工事をひたすらやっていたNECシステム建設(現・NECネッツエスアイ)だったんです。