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「イイジマサンが生放送をやりたいって言ってます」
妻が日本に帰ってきた。
「もうバラエティーは出来ないかもしれない。テレビどころじゃないかもしれない」
妻に言った。
つまりそれは妻の仕事も僕の仕事も成立しないということだ。
本当にそう思った。
日本のテレビを見て被害を知った妻が、僕の言葉を否定することはなかった。
SNSで日本の芸能人・著名人が続々関西の方に逃げているという情報が目に付いた。
誰がどこにいるという目撃情報が入ってきていた。
大阪や福岡、沖縄。
テレビの収録もない。身の安全のため、東京を離れていると。
やっぱり少なくとも東京にはもう住めないのかもしれない。
ごまかしていた自分の気持ちにごまかしがきかなくなった。
テレビ番組の会議もすべてがなくなっていた。放送がないし収録もない。
自分もこのまま東京にいないほうがいいのかもしれない。
我慢出来なくなった。
ネットを開くと、飛行機も新幹線のチケットもだいぶ埋まっていたが、ギリギリ翌日の 沖縄行きのチケットが2名分残っていた。
そのチケットを予約した。
罪悪感はあった。だけど、感じたことのない不安と恐怖で押し潰されそうになっていたから。
ずっと自分をごまかしていたからこそ、一気に吹き出した。
予約を完了したあとに、春田から電話があった。
電話に出ると春田は言った。
「来週の月曜日にイイジマサンが生放送をやりたいって言ってます。今晩、みんなで会えますか?」
生放送?
こんな状況で?
信じられなかった。