2024年2月17日、打ち上げに成功したH3ロケット。同ロケットの開発プロジェクトは「日本が世界の宇宙時代に取り残されない」ための危機感を背負っていたが、2023年2月には1号機が打ち上げに失敗。それからちょうど1年、開発者たちによる必死の原因解明が実を結んだのだ。
この再挑戦の物語をノンフィクション作家の山根一眞氏が、関係者への徹底取材により克明に綴ったノンフィクション「H3ロケット JAXA再挑戦の365日」が、3月8日(金)発売の月刊「文藝春秋」4月号に掲載される。
30年にわたり日本のロケット開発を取材してきた山根氏が、JAXAのプロジェクトマネージャ・岡田匡史さん(61)や、三菱重工の宇宙事業部プロジェクトマネージャー・新津真行さん(59)から引き出したのは、記者会見では聞く事の出来ない本音。貴重な証言ばかりだ。
「異常発生の0.03秒」に何が起こったか
2023年2月17日、1号機ロケットは発射台に居座ったままで打ち上げは中止となった。補助ロケットブースター(SRB)が点火しなかった。その18日後の3月7日には、第二段ロケットの燃焼が始まらずに自爆という結果に帰した。
「何かあるとすれば第一段だと思っていました。最初のトライではSRB(補助ロケットブースター)に火がつかなかったので、SRBに火がつき射点から問題なく上がり、エンジンがちゃんと燃焼してくれて、これはやったと思ったんですが、まさか二段で問題、なぜ、と時間が止まったように思えました」(新津さん)
データの分析、シミュレーション、実験を繰り返したが、原因解明は困難をきわめた。
「ロケットから届いていたデータをもとに、異常発生の0.03秒の間に何が起こったかを見出さなくてはならなかったんです。電気の専門家にも加わってもらい原因を絞り込むまでの日々は、ホント、辛かった」(岡田さん)
考えられる原因を三つに絞り込めたのは8月に入ってからだった。