メラニー まさに今おきているイスラエルとハマスの問題が投票にどう影響するかですよね。アメリカではイスラエル寄りの人も多そうですし。
猿渡 そうですね。でも、私としては『バービー』が獲るのが一番嬉しいんですけど。
作品賞独自の投票方法が『バービー』の追い風に?
町山 僕は『オッペンハイマー』と『関心領域』は意見が分かれると思うんです。両方ともユダヤ人の映画ですけど『オッペンハイマー』は原爆の被害を描いてないという批判があるし、『関心領域』もホロコーストと同じことを今まさにイスラエルがしてるわけで反感も呼ぶと思います。作品賞は投票方式が変更されてから投票者の好感度が高い作品が獲る傾向が続いているので、そう考えると『バービー』かなと予想しました。
メラニー 作品賞だけは投票者が候補作全部に順位を付ける投票方法ですから。
猿渡 1位に入れた人が一番少ない映画を落としながら、ひとつの作品が半数を獲得するまで数え直して決めます。ただ、『バービー』は保守派の男性に嫌う人が多いです。
町山 それでグレタ・ガーウィグが監督賞にノミネートされなかったことへの抗議の意味で、作品賞に入れて評価したい気持ちも強いかなと。
猿渡 私もその理由で脚色賞を『バービー』にしました。
“加害者側”の映画が多いノミネート作
メラニー 私もです。今年の作品賞候補を観て感じたのは『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』をはじめ加害者側の映画が多いんです。しかも被害者の深いところが描かれていない。『関心領域』は音でしか虐殺が描かれないし、『オッペンハイマー』では日本での原爆投下の映像を見ている主人公を映すのみでした。その意味で町山さんがおっしゃる『バービー』が一番分かりやすい例ですけど、私はまだ『The Holdovers(原題)』と『アメリカン・フィクション』を観られていないので、その二つが共感できる映画なら可能性はあるかなと思いました。