3月10日(日本時間3月11日)に授賞式が開催される米アカデミー賞。今回は長く続いたアメコミのブームが去り、「楽しめる良作」が多数ノミネート。年に一度の「映画のお祭り」の主役になる作品は⁉ 『週刊文春CINEMA』2024春号より、アカデミー賞を熟知した3名による予想座談会を一部抜粋して公開します。
◆◆◆
町山智浩
映画から政治まで、アメリカ文化に精通。作品賞の予想『バービー』
猿渡由紀
現地の映画ライター間の評価も踏まえて予想。作品賞の予想『関心領域』
Ms.メラニー
アカデミー賞予想の「楽しさ」の伝道者。作品賞の予想『オッペンハイマー』
猿渡 今年のフロントランナーは、なんといっても最多13部門でノミネートされている『オッペンハイマー』ですね。
メラニー なので私は作品賞を『オッペンハイマー』と予想したんですけど、今年は30年に一度レベルに良質な作品が揃った年だと思うんです。話題作が並ぶ中『パスト ライブス/再会』みたいな新進監督の作品も入ってバランスもいい。30年前『シンドラーのリスト』(94年)が作品賞を獲った時の感じに似てるなって。
猿渡 私は作品賞を『関心領域』にしたのは『1917 命をかけた伝令』(20年)が絶対獲ると言われながら『パラサイト 半地下の家族』(20年)に逆転された時と同じことが起こりそうな直感があるからです。『関心領域』は撮り方もカメラを固定してドラマチックなことを一切やらない。ホロコーストをこんなに作家性豊かで感情的にならない視点から描いたものはなかったし、もともとアカデミー会員はユダヤ系が多いですから。