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そのテーブル席についていた学生たちの、私以外のほとんどが何かしらのコネを持って内定を得ていたと知ったのは、入社してからだった。
コンピュータメーカー会長の甥っ子、有名百貨店の広告担当役員の息子、新聞社の役員の息子、テレビ局の有名プロデューサーの息子、大手出版社の有名雑誌編集長の息子、衆議院議員の息子……じつに多彩なコネだった。
「ホテルの部屋に女の子たちを呼んであるんだよ~ん」
「ねえねえ、君たち、僕と一緒に来ない? これから行くホテルの部屋に女の子たちを呼んであるんだよ~ん」
内定者パーティーが終わったタイミングで、長身の本関君がその場にいた数名の内定者に声をかけた。酔っぱらってふざけた口調だった。
彼は大手電機メーカー・N社のドンの息子で、そのことは私を含めその場にいる全員が認識していた。彼もまた“強力なコネ”で電通に入社したに違いない。
本関君が指定したのは都内の高級ホテルのスイートルームだった。内定者同士で顔を見合わせ、うなずき合った。20代前半の好奇心は抑えることができず、われわれは本関君のあとにしたがい、そのままホテルのスイートルームに向かった。