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「それは1円にもなりませんね」余計なことまで言ってしまう、上手く取りつくろえない…山下智久(38)の“嘘がつけない姿”はなぜグッとくるのか

2024/03/12
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「それは1円にもなりませんね」言葉とは裏腹に…

 なぜ儲からないのに50年も和菓子屋を続けてきたのか。そう石田に問いかけるシーンがドラマ版にはある。

 大した理由ではないと前置きした石田はこのように答えた。「俺の菓子食うとみんな幸せそうな顔する」「だから続けられた」と。ここでも“風”に吹かれた永瀬は、「それは1円にもなりませんね」と返事をしてしまうのだが、石田は「でも仕事ってのはそういうもんだ」と微笑むのだ。

「それは1円にもなりませんね」のセリフとは裏腹に、石田の言葉を一言一句逃すまいと真剣に聞く永瀬の表情に、山﨑との会話を勉強のために全て録音しているとテレビで話していた山下を思い出した。

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 山下が山﨑の背中を追いつづけるように、ドラマ版の石田も永瀬にとってロールモデルのような存在になっている。石田の真摯な生きざまを通して、永瀬は改めて“働くことの意味”を自身に問いかけていくのだ。

「一生懸命に働く人が報われる社会でありますように」という願い

『正直不動産』はどうして我々の胸を打つのか。それは“悪い人が良い人になる物語”だからという単純な理由ではなく、一生懸命に働く人が報われる社会でありますように、という願いが込められているからだ。

3月12日に最終回を迎える『正直不動産2』(NHKドラマ公式Xより)

 残念ながら、永瀬のように正直にしか生きることができない人が、現実世界で必ず報われるとは言いきれない。もしかしたら損をすることのほうが多いかもしれないし、なかには不器用だ馬鹿だと嘲笑う人もいるだろう。そんな世知辛い世の中に、『正直不動産』は新しい風が吹くことを願っているのではないだろうか。だからこそ、永瀬たちは「努力は必ず報われる」を体現し続けているように思うのだ。

 ちなみに、ドラマ『正直不動産』シリーズの脚本を担当する根本ノンジは、2024年後期の朝ドラ『おむすび』の脚本家でもある。ひょっとしたら山下が初めて朝ドラに出演するという展開もあったり? そんな期待に胸を膨らませつつ、まずは今夜最終決戦に挑む永瀬財地の勇姿を見届けたい。

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