その後も、『トロイ』(2004)ではギリシャ神話の戦士、アキレスになるため、顔幅と同じサイズに胸鎖乳突筋を太らせたり、50代半ばで出演した『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)では、一瞬CGと見間違えそうなクッキリとした6パックを披露して、役に対する献身に変わりがないことを証明した。あるものを捨て去り、元に戻し、再び増強する。凄い役者根性だ。
筋肉戦争には無縁に思えるディカプリオですら…
『ワンス・アポン~』でピットと共演したレオナルド・ディカプリオは、日本ではアイドルだが母国アメリカでは早くからキャラクターアクター(性格俳優)という位置付けだ。従って、筋肉戦争には無縁のように思えるレオですら、『ワンス・アポン~』でアクションスターを演じるために大好きなパスタやスイーツを断ち、1日数百回もの腕立て伏せにチャレンジしたというデータが残っている。だが、どうだろう? レオがマジで腹筋して汗を流す姿は、どうも想像し辛い。
筋肉のかけらすらないティモシー・シャラメの衝撃
時代は移り、ハリウッド映画に於ける筋肉の価値にも変化が生まれる。どこをどう見ても筋肉のかけらすらないアイドルが最大の注目を浴びているのだ。ティモシー・シャラメだ。
『君の名前で僕を呼んで』(2017)では細い背中からウエストにかけて、少年独特の曲げたまな板のようなボディラインで観客を驚愕させたシャラメだが、『ビューティフル・ボーイ』(2018)ではさらに残り少ない筋肉を削いで麻薬常習者の青年を好演。そうなると3サイズが気になるところだ。色々調べた結果、現状、身長183センチに対して体重は68キロ、服のサイズはUSの6、つまりバストが86センチ、ウエストが66センチということらしい。細い! カンヌ映画祭等で彼を至近距離で見た日本人ジャーナリストに拠ると、実物は映画で見るよりさらに細いとか。
シャラメが意図的にスリム体型を維持しているかどうかについては不明だ。筋肉をつける方法を開示することに迷いがなかったスターの歴史に於いて、筋肉を削ぐことについて語りたがらないシャラメは、どこか謎めいていて、ハリウッドスターのニューウェイブと言える。ルックスだけでは勿論ない、ヨーロッパの香りを漂わせる演技派の貴公子としての魅力が個性的な外見を後押ししている。