「私ね、離婚に関わる公正証書を書いたの。よく読んで検討して」
約30年勤務した電通をやめた福永耕太郎氏。退職した直後に妻から三行半を突きつけられ、最終的には財産まで失ってしまった理由とは……? 新刊『電通マンぼろぼろ日記』(三五館シンシャ)より一部抜粋してお届けする。なお、登場人物はすべて仮名である。(全2回の2回目/前編を読む)
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妻から突きつけられた三行半
電通を退社して数日が経ったころ、家にいた私のもとに妻が歩み寄ってきた。彼女の手には数枚の書類が握られていた
「私ね、離婚に関わる公正証書を書いたの。よく読んで検討して」
私は絶句した。妻から三行半を突きつけられるとは思ってもみなかったからだ。数年前から、妻との夫婦喧嘩のたび、私が投げかけた暴言が思い起こされた。
「誰に食わせてもらってんだ!」「おまえのほうがこの家から出ていけよ!」
後悔とやるせなさがとめどなくあふれ出た。私が彼女に対して行なったのはパワハラ・モラハラだっただろう。私は気づかぬうちに、彼女の心をぼろぼろにしていたのだ。
私は妻と何度となく話し合いの機会を持った。時間はいくらでもあった。家のリビングに向かい合って座り、彼女の気持ちを聞いた。私はなんとか2人のあいだにある溝を埋めたいと思った。
だが、そのたびにむなしくなった。彼女はいつも生返事だった。その表情からは、「あなたと関係を修復するつもりはありません」というゆるぎのない拒絶が伝わってきた。彼女は私が投げかけた言葉を許すことができなかったのだ。
結局、妻は離婚の意思を翻すことはなかった。
彼女が書いた離婚に関わる公正証書を読み、慰謝料や財産分与など金銭的な決め事に合意した。
私たちは2人で公証役場に赴いた。