「よく覚えておけ。土下座ほど効率のいい手法はないぞ」

 日本を代表する大手広告代理店「電通」――同社の営業畑で約30年、身を粉にして働いた元社員の福永耕太郎氏が語る「土下座の力」とは? 初の著書『電通マンぼろぼろ日記』(三五館シンシャ)より一部抜粋してお届けする。なお、登場人物はすべて仮名である。(全2回の1回目/後編を読む)

元電通マンの筆者が明かした「土下座の力」とは――? 写真はイメージ ©getty

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クライアントは神さまです

「今すぐに、俺が飲んでいる店に来い!」

 大手電機メーカー・S社の宣伝部メディア担当の田代部長からの電話だった。

 私は、上司である吉井部長とともに、田代部長が飲んでいた銀座ソニービル地下にある店に、急遽呼び出された。

 私はすぐにピンときた。翌朝の日経新聞に掲載される予定の広告の割り付け変更が彼の逆鱗に触れたのだ。

 田代部長は以前から、自社の広告を日経新聞の第1全広面(めくり順で一番目の全面広告面)に掲載することを絶対としていた。「読者が一番最初に目にするところだろうが!」というのが彼の持論だった。

 田代部長の意向を受けて、私たちはS社の広告出稿に際しては、日経新聞に強く働きかけ、掲載日と掲載面を決める割り付けの交渉を行なっていた。