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「いかに楽して、やらないか?」世界最前線で開発に挑むエンジニアと、広告業界の異端児が一致して推す“仕事の戦略”

牛尾剛×三浦崇宏

source : ライフスタイル出版

genre : ライフ, 読書, 社会, 働き方

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 ガチ三流プログラマが超巨大クラウド開発の最前線にいくとどうなるか? そんな状況での学びを凝縮した『世界一流エンジニアの思考法』が話題沸騰中の米マイクロソフトシニアエンジニア・牛尾剛さんと、広告業界の異端児、クリエイティブ・ディレクターの三浦崇宏さんが、仕事の生産性を高める秘訣について語り合った。

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「いかに努力しないで勝つか、結果を出すか」

牛尾 はじめまして。三浦さんの『超クリエイティブ』と『言語化力』の著書を読ませていただいて、エンジニアと広告クリエイティブの世界の考え方との共通点や違いなどがすごく興味深かったので、今日は楽しみにしていました。

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三浦 お声がけ頂いてありがとうございます。『世界一流エンジニアの思考法』で書かれていた“Be Lazy”(怠惰であれ)の考え方――生産性を上げるために大事なポイントは「いかにやることを減らすか?」にあるなど非常に刺激的で、いろいろお話ししたいと思っていました。

写真:アフロ

牛尾 三浦さんの本を読んで、ひとつ僕との大きな違いは、三浦さんは幼少の頃から結構「できる子」でしたよね?(笑)。僕は本当に何やっても要領が悪くて、勉強も運動もできない子でしたが、僕が40歳くらいになってやっと気付いたようなことを、三浦さんはもう高校の時に実践している。

 印象的なエピソードが、高校のとき柔道の弱小チームにいた三浦さんがものすごい練習量を積んでいる強豪に勝つために、「みんなが知らない技なら防げないだろう」と、総合格闘技の技を学んで、ライバルを次々となぎ倒していった話でした。「努力しないための努力」を徹底的に考え抜いていて、本当すごいと思いました。

三浦 小さい頃からわりと体が大きかったので、自己肯定感はそれなりに高く育ったのかもしれません(笑)。「いかに努力しないで勝つか、結果を出すか」ということは、昔からものすごく考えていて、柔道の試合でも進学校で練習量が少ない中でも絶対に勝ちたかったから、いかに普通の練習をしないで勝つか考えて、工夫したんです。

 いかにやらないかというアプローチは「Be Lazy」の精神とも深く通じる話ですが、その考え方にはアメリカに行ってから出会われたんですよね。

「Be Lazy」の考え方にアメリカで出会う

牛尾 はい、僕はもともと日本の大手SIerにいて、その後は自分で会社を立ち上げコンサルタントとして日本の会社にIT技術導入のお手伝いをしていました。でもずっとプログラマへの夢を諦めきれず、友達に「マイクロソフト向いてるんじゃない?」と勧められて受けたら、最初エバンジェリストとして採用されたんです。

牛尾剛氏

 僕は外資系企業が初めてで様々な衝撃を受けるのですが、念願かなってプログラマとしてのポジションを得て最初に受けた洗礼が「Be Lazy」の考え方でした。渡米後、なんとかして早く成果を出したいと一生懸命頑張って仕事をしていたある日の19時、まあそんな時間は日本なら残業のうちにも入らない時間帯ですよね。