対立抗争状態が続くなかでも、暴力団組織にとって恒例行事の開催は欠かせない。今年1月25日、国内最大の暴力団「6代目山口組」組長の司忍の83歳の誕生日会が、愛知県瀬戸市内で開催された。

 瀬戸市には傘下の2次団体の本部があり、ナンバー2の若頭・高山清司を筆頭に直参と呼ばれる直系組長らが集合。和服姿で登場した司は最高幹部の出迎えを受けて招き入れられ、宴席は2時間ほど続いた。

6代目山口組の司忍組長 ©時事通信社

6代目山口組は神戸、司忍の出身母体は名古屋市内に本部があるのになぜ?

 6代目山口組と言えば神戸が本拠地であり、神戸市灘区篠原本町にある本部事務所は、業界では通称「シノハラ」で通用する。そして組長の司の出身母体の弘道会は名古屋市内に本部を置いている。それでは、6代目山口組はなぜ「シノハラ」などの主要施設でこうした行事を開催せず、瀬戸市に集まるのだろうか。

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 その理由について、長年にわたり組織犯罪対策を担当してきた警察当局の捜査幹部は、こう強調する。

「特定抗争に指定されているため、多くの拠点がある関西や名古屋では5人以上で集まると逮捕される。大きな集まりを開催するのはとても無理な状態だ」

 特定抗争指定とは、指定暴力団同士が対立抗争状態にあると各地の公安委員会が認定した場合、双方を「特定抗争指定暴力団」として活動を厳しく制限する規定のことだ。暴対法に定められている。

山口組弘道会本部で、「特定抗争指定暴力団」に指定されたことを示す標章を貼る愛知県警の捜査員ら ©時事通信社

「抗争状態にある組織の活動拠点などを警戒区域に設定し、その区域内でおおむね5人以上で集まっている場合、警察は中止命令などの行政手続きを経ずに即座に逮捕することができる。実際に、現行犯での逮捕の事例もある。このほかにも対立する組織の周辺をうろつくなどの行為も禁止事項にあたる」(前出・警察幹部)

 6代目山口組は2015年8月に分裂して以来、離脱した「神戸山口組」との対立抗争が10年近く続いている。抗争が原因となった事件やトラブルで、これまで多くの死傷者が出てきた。最近は衝突の発生件数は減少傾向にあるとはいえ、警察当局は引き続き警戒体制を解いていないのだ。