特定抗争指定暴力団に指定された最大のきっかけは、2019年秋に続発した抗争事件だった。

 2019年10月、6代目山口組弘道会系の幹部が神戸山口組山健組(当時)系の組員2人を同時に射殺する事件が神戸市内で発生。

 翌11月には6代目山口組系の元組員が神戸山口組幹部に向けて自動小銃を乱射して殺害。遺体は蜂の巣状態となる凄惨さだった。この事件は尼崎市内の商店街で発生しており、多くの買い物客が行きかう夕方頃の犯行だったため警察当局は激怒し、特定抗争指定に舵を切った。

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 この時期に抗争が激化した理由は若頭の高山の出所だった。

「恐喝事件で長期間にわたって刑務所に収監されていた高山が2019年10月に出所した。それと前後して6代目山口組側が突然、凶悪な事件を連続で引き起こしている。高山の出所に合わせ、神戸(山口組)に対して圧力を強めたということだろう」(警察当局の幹部)

高山清司

 それらの事件を受け、6代目山口組と神戸山口組は、兵庫県の公安委員会などによって2020年1月に特定抗争指定暴力団に指定された。この際に設定された警戒区域は神戸市や大阪市、名古屋市など6府県の10市となった。そのため、6代目山口組の面々が集まる時にはそれ以外の場所を用意する必要があるのだ。

納会は静岡県浜松市、餅つき大会は愛知県の瀬戸市で開催

 6代目山口組系の幹部は、特定抗争指定による規制の厳しさについてこうこぼした。

「抗争とは何の関係もない誕生会や納会で集まっていても、警察からは『5人以上で集まったのは抗争の準備のためだな!』と逮捕される。それはバカバカしいので、外出する時は同じ場所に5人以上集まらないように気を使うようになった」

 暴力団には、誕生日会以外にも年間に恒例行事がいくつもある。6代目山口組では年末に新年会にあたる「納会」を開催しており、昨年末は12月13日に警戒区域外の静岡県浜松市内で開催された。

 同年12月28日にはこちらも恒例行事となっている「餅つき大会」の会場は愛知県瀬戸市だった。いずれも傘下組織の本部で行われ、組長の司や若頭の高山ら最高幹部が集まった。

 大晦日の初詣もかつては相当数で神戸市内の6代目山口組本部近くの神社を訪れていたが、特定抗争指定を受けてからは4人以下で分散しての参拝となった。代々の組長の墓参りも、少人数で分散して行われている。