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誰でも撮れる時代にプロカメラマンの存在意義はあるのか…ベテラン写真家たちが写真展で示した“答え”とは

写真展「置き去りの記憶」を訪ねて

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 スマートフォンを使えばだれでも簡単に動画や写真の撮影ができる今、それでも見る人の心を動かすため、“本気”で写真に向き合っているプロのカメラマンたちがいる。彼らが集い、スポンサーの縛りがなく、モデルもクリエイターも感性のまま自由に表現したのが「Negative Pop」である。2018年のスタート以来、全世界の写真好きから人気を集めている。

 そんなカメラマンたちが集まったグループ写真展「置き去りの記憶」が、3月4日(月)から3月30日(土)まで、東京・赤坂の「Bar山崎文庫」で開催されている。

 なぜ今回のテーマは「置き去りの記憶」になったのか? 「Negative Pop」を主宰するカメラマンの丸谷嘉長氏は「『私の父親との愛憎』がテーマのスタートでした」と語る。

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©丸谷嘉長

「30年以上前に亡くなった父とは決していい親子関係ではありませんでした。亡くなった後も父のことを懐かしむことはあまりなかったのですが、約10年前、初めて津軽三味線の『津軽じょんがら節』を聞いた時なぜか涙が止まらなくなりました。

 『津軽じょんがら節』で表現されているのは『妬み』『嫉み』『希望』『愛情』『憎しみ』『夢』など人間の多種多様な感情です。振り返ってみると『津軽じょんがら節』は私が父に感じている記憶とまさに同じ。

 いつか『津軽じょんがら節』をモチーフに作品を撮りたい、と思いながらもなかなか踏ん切りがつかず、自分自身が60歳を超え父が亡くなった年齢に自分も近づきやっと撮影を決めることができました。

 この作品は私にとって父が亡くなった日に置き去りにした記憶です」

 撮影場所は青森。「津軽じょんがら節」の舞台を実際に訪れ、1月の真冬の最中、マイナス10度を下回る過酷な環境で行なったという。

「『津軽じょんがら節』は私にとって雪原をさまようイメージでした。朝4時から雪原で撮影を行い、地吹雪の中、撮影しました。光が差し込む晴れかと思ったら雪が降りだす大変なお天気で、その困難な撮影も自分の順調ではない人生と重ね合うような気がしました」

山崎文庫では丸谷氏の他にも舞山秀一、コバヤシモトユキら人気カメラマンの作品が勢ぞろい。写真と真っすぐに向き合っている彼らの作品を楽しみたい。

©舞山秀一

INFORMATION

「Bar山崎文庫」東京都港区赤坂6-13-6 赤坂キャステール102/写真展『置き去りの記憶』は3月4日(月)から3月30日(土)、月~金は17時~26時、土曜・祝日は17時~24時 、日曜定休 https://www.bar-yamazakibunko.com/

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