“インバウンド回復”をリードする国は?
一部のアンチ中国の人たちにとっては、中国人の訪日数が減ったことはむしろ喜ばしいことなのかもしれないが、実は現在のインバウンド回復をけん引しているのは、韓国である。韓国からの訪日客数は23年で695万8000人。19年の558万4000人を137万4000人も上回っている。報道ではよく最近では欧米人の数が増えたと伝えているが、増えているのはアメリカで、19年との比較では32万2000人の増加。ただ増加数では韓国の増加の23%に過ぎない。また欧米のうちの「欧」は21.5%の減少で、全体の減少率とほぼ一緒と言えるのでヨーロッパからの訪日客も増えたと思うのは錯覚である。
日韓関係については様々な世論の声もあるが、韓国が激減した中国人訪日客を補う救世主ともいえる存在になっている。
なんだかんだ言ってもインバウンドを支えているのは、中国、韓国、台湾、香港の東アジア4か国だ。東アジアからのインバウンド客の比率は19年で70%、中国が退潮した23年でも63%を占めている。日本を旅行する彼らの多くが実はリピーターだ。
観光庁の調査によれば、初めて日本を訪れた人は香港で12.3%、台湾で14.4%、韓国で24.1%にすぎない。香港の場合、日本に来た回数が10回以上の人が29.7%、2~9回が58%を占めている。リピートしているのは距離的な近さ、アジアとしての親近感だろうが、アジアからのお客様を大事にしなければ日本の観光業は成り立たないのである。
アウトバウンドの足取りが重い原因
いっぽうで深刻な事態になっているのが日本から海外に飛び立つ人、これをインバウンドに対してアウトバウンドと呼ぶが、コロナ禍を経て、海外旅行に繰り出す日本人もコロナ前に戻りつつあるかと言えば、どうも足取りが重たい。国土交通省の調べによれば日本人出国者数は2019年に2008万人と初の2000万人の大台を突破したが、2023年、その数は962万4000人と19年の半分以下の水準に留まっている。インバウンドが8割方に戻ったのとは対照的だ。
原因は2つだ。日本人の“貧乏化”と“高齢化”だ。世界はコロナ禍からの回復と同時にインフレ時代を迎えた。コロナ対策を理由に世界中にばらまかれたマネーはインフレを招来し、各国の金利は高騰。相変わらず低金利政策の一人旅を続ける日本との金利差は広がり、円安を助長。ウクライナ紛争、ガザ地区での動乱などを契機とするエネルギーコストが上昇している。
こうした要因は日本の海外旅行好きの方々には大打撃となる。ただでさえコロナ禍で警戒を強めていた日本人にとって、航空運賃、海外ホテルの宿泊費、渡航先での物価などの高騰は、一向に給料など手元の収入が増えないばかりか、相次ぐ増税、社会保障費の引き上げが続く中、おいそれと海外に出かけていく勇気が持てなくなって当然だ。