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旅行客の高齢化が追い打ちをかける

 さらに追い打ちをかけているのが旅行客の高齢化だ。今、日本人の旅行需要をけん引しているのは高齢者だといわれる。特に人口構成上のボリュームゾーンといわれる団塊世代(1947年から49年生まれ)が元気に旅行をしてきた19年頃と比べ、25年には彼らのすべてが75歳以上の後期高齢者に分類されるようになる。住んでいる街の周辺部であればともかく、長い時間飛行機に乗って海外旅行ができる人は今後はどんどん少なくなってくるのは自明だ。

 JTBでは24年の海外旅行者数を1450万人(19年比72%)と推計しているが、24年1月の直近値で出国者数は83万8000人。19年比の58%にすぎない。

 こうした影響は欧米などで観光ガイドを務める海外在住日本人の生活にも影響を及ぼしている。先般、ヨーロッパに出張した折にガイドしてくれた方によれば、日本人の海外出張の減少と団体旅行客の減少によって、ガイド業は瀕死の状況。ガイドも高齢化がすすみ、このままでは日本人旅行客をガイドする人がいなくなるのではないかとの心配が現地でうわさされているという。現地では日本人向けのツアーは減り、百貨店や土産物店でも日本語での表記が激減しているという。

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 さらにこの先の未来に横たわるのが国内旅行客の激減だ。先述したように団塊世代がすべて後期高齢者になる25年以降、国内旅行客の減少は避けられなくなる。補うのがインバウンドであるが、インバウンドの消費額は年間でせいぜい5兆円程度。対する国内旅行消費額は21兆円だ。

これからの日本国内の旅行客は…

 この国内旅行客の減少を埋め合わせることを現役世代に求めるのは酷な話だ。彼らは住宅を確保するために年収の十数倍ものローンを背負い、膨らむ教育費、物価の高騰、増税、社会保険料の引き上げに苦しみ続ける世代であるからだ。

 日本を観光立国に、という掛け声がある。確かに日本は世界に類を見ない自然環境、食事、交通体系を具備する稀有な国だ。今後も世界中から観光客がやってくるかもしれない。だが国内、訪日客の消費額は合わせても26兆円。日本のGDP595兆円のわずか4.4%にすぎない。

 やがて国内を旅行するのは裕福な外国人ばかりとなり、これにご奉仕する貧しい日本人。海外旅行をするのは一部の富裕層だけという日が来るのも近いかもしれない。