マサイ戦士のリーダーと2005年に結婚し、第二夫人となったツアーコーディネーターの永松真紀さん(56)。
ケニアとタンザニアに暮らす少数民族・マサイ族に惹かれ、ケニア移住歴30年弱になる永松さんに、その独自の文化について聞いた。(全2回の1回目/続きを読む)
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自分たちの生き方、文化に誇りを持つマサイ族
――マサイ族は世界的にもよく知られた民族ですが、ケニアの中では少数民族だと聞きました。なぜここまで有名なのでしょうか。
永松真紀さん(以下、永松) アフリカの多くの民族は、結婚式にウェディングドレスを着たり、日曜日に教会に行ったりと、今ではライフスタイルが西洋化してしまって、他の国と変わらなくなってしまったんですよね。
そんな中、ケニアの人口のわずか2%しかいないマサイは、お金ではなく牛に価値を置き、年齢ではなく時代ごとに人生を分けるシステムだったり、さまざまな儀式といった独自の文化を維持し続けている。それが私にとっても本当に面白いし、世界的に有名である理由でもあるのかな、と。
――永松さんの夫は伝統的なマサイ戦士でありながらも、第二夫人として日本人の永松さんを迎えるなど、文化を重んじながらも排他的ではないといいますか。
永松 彼らは、自分たちの生き方、文化に誇りを持っているので、リスペクトを持って接してくる人はウェルカムなんです。
一方で、マサイのことを理解しようともせず、オラオラと殴り込んでくるような相手は大嫌い。だから、植民地時代に白人たちが武力で制圧しようとしてきた時も、マサイは徹底的に戦ったんです。
マサイでの財テクは“牛”
――先ほど、お金ではなく牛に価値を置いているという話がありました。マサイでは、牛をたくさん持っている人ほど裕福?
永松 牛と土地、ですね。牛をたくさん飼うには広い土地がいるので、これはイコールの関係になりますけど。ただ、牛をたくさん持っているお金持ちでも、お金で貯蓄はしてないですよ。私の夫も、銀行口座なんて持ってないです。
今、アフリカではめちゃくちゃモバイルマネーが流行ってますが、そこだって100万円も入れられないし、マサイの地域で経済活動をする場合、携帯の中にお金を入れておいても増えませんので、結局、モバイルマネーを牛に換えて財産を増やすことになる。だから、マサイでの財テクは、牛です。
――では、牛を上手に育てられるかどうかで貧富の差が出る?
永松 牧畜技術もあると思いますが、いい土地を持っている人なら、常にそこに水があって草が生えているでしょうから、牛が病気になったりする確率は低くなりますよね。