3年間付き合ってきた彼氏に突然フラれた。しかも、「本命がいる」という。30も目前で結婚も考えていたのに――!
信じていた人からあまりにひどい仕打ちを受けた時、人は何をするのだろうか。ヤケ酒、ヤケ食い、もしくは復讐を考えてしまうかもしれない。しかし、本書の主人公が選んだのは傷ついた心を癒す“旅”だった。
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「旅は憂いもの辛いもの」なんて諺が存在するほど、昔の旅行は心配や苦労がつきもので、もはや“修行の場”だったそう。交通や情報通信技術が発達したお陰で、今ではかなり気軽な存在になったけれど、見知らぬ土地にいることで得られる程よい緊張感、そして非日常な体験によってみなぎる「やってやるぞ!」という不思議な万能感は、きっと今も昔も変わらない。
この諺を現代版にアレンジしたようなタイトルを持つ『旅は愛いもの甘いもの』(原作:ももしろ/漫画:三月トモコ)には、そんな旅行がもたらす不思議なパワーがギュッと詰まっている。
主人公はまもなく30歳を迎えるしがない派遣OLの涼音。ある日突然付き合っていた彼氏にフラれた挙句、自分は二番目であったことが判明する。人生どん底の涼音は一人で九州は宮崎県へ行くことに。
目指したのは九州を代表するパワースポット高千穂峡。大自然に心が洗われた涼音は真名井の滝、高千穂神社と次々とパワースポットを訪れる。とはいえ、彼氏とヨリが戻ったりするような“ご利益”はすぐに訪れない。だけど、だんだんと表情が輝いていく涼音を見ていると、先述の旅が持つ不思議な“効能”を確信する。
さらに、上向くのは涼音の気分だけではない、前向きになった気持ちが引き寄せるのか、彼女は旅先で素敵な男性と運命的な出会いを果たす。ひょんなことから一緒に旅を続けることになり、“愛い”くて“甘い”展開が涼音を待っている。
作中には実在の観光スポットが続々と登場するため、次の旅行先候補として参考にしたくなるような旅本としての魅力を持つのはもちろん、“甘い”恋愛描写にはドキドキさせられる。これも旅の効能なのかと考えると、次の休暇にどこ行こうかと旅行の計画を立てたくなる。ぜひ涼音と一緒に、旅がもたらす不思議なパワーを再確認してみてはいかがだろうか。