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「娘の遺体は凍っていた」発見から3年 旭川14歳少女イジメ凍死事件とはなんだったのか

「娘の遺体は凍っていた」発見から3年 旭川14歳少女イジメ凍死事件とはなんだったのか

旭川14歳少女イジメ凍死事件

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 北海道旭川市の中学2年生だった廣瀬爽彩さんが壮絶なイジメを受けた末、行方不明になったのが2021年の2月13日。それから1か月以上が過ぎた3月23日、雪に覆われた公園で、爽彩さんは変わり果てた姿で見つかった。警察による検死の結果、死因は低体温症。失踪当日に亡くなった可能性が高いという。

 それから丸3年の月日が経過した。

 2022年9月に提出された第三者委員会の報告書は、爽彩さんの死とイジメの因果関係を否定。しかし遺族はこの報告に強く反発し、旭川市長もその意向をくみ再調査を命じる事態に。新たな調査委員会が3月末に再調査を終える予定と発表されているものの、調査結果の公表時期などは未定となっている。この問題が解決に向かう道筋はまだ見えていない。

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「文春オンライン」は、爽彩さんが亡くなった2カ月後の4月から事件を報じ続けてきた。このいたましい事件を風化させないため、爽彩さんの行方不明から2年という日に、一連の記事の中から一部を再公開し、改めて卑劣なイジメの実態を明らかにする。

14歳の少女を死に追いやった陰惨なイジメ

 2021年、文春オンラインがこの事件を初めて扱った「娘の遺体は凍っていた」14歳少女がマイナス17℃の旭川で凍死 背景に上級生の凄惨イジメ《母親が涙の告白》 を公開した。北の大地を揺るがす、陰惨なイジメ事件が明るみに出た瞬間だった。

亡くなった廣瀬爽彩さん
亡くなった廣瀬爽彩さん

 爽彩さんの遺体が発見されたのは2021年3月下旬。その1月ほど前の2月13日に母親の留守中に自宅を飛び出し、行方不明になっていた。ボランティアなどが懸命に捜索を続けたものの、雪解けが進んだ旭川市内の公園で変わり果てた姿で見つかってしまったのだった。

 取材班が遺族やその支援者への取材を進めていくと、爽彩さんはかつて通っていた中学校でイジメにあっていたことが分かった。家を飛び出す1年ほど前からは自宅に引きこもりがちになり、「ごめんなさい、ごめんなさい」「殺してください」という独り言が部屋から聞こえるようになった。絵を描くのが好きだったという爽彩さん。取材班が遺族に見せてもらった絵は、明るくカラフルなものから、モノトーンで暗いイメージへと変わり果ててしまっていた。

 爽彩さんが受けていたイジメの壮絶な内容は「ママ、死にたい」自慰行為強要、わいせつ画像拡散……氷点下の旭川で凍死した14歳女子中学生への“壮絶イジメ”《親族告発》でその一部を報じた。

爽彩さんがイジメをうけた後に描いた絵のトーンは暗い
爽彩さんがイジメをうけた後に描いた絵のトーンは暗い

 爽彩さんが受けていたイジメは想像を絶するものだった。爽彩さんは2019年に市内のY中学校に進学し、間もなく上級生などからイジメを受けるようになる。裸の写真を送るように強要されたり、早朝4時に呼び出されたりするなどといったイジメが続き、爽彩さんはPTSDを発症した。

 爽彩さんの母親は何度も担任の教員に相談したが、担任はイジメではないと問題に対処する意思を見せなかった。爽彩さんへのイジメは次第にエスカレートしていき、複数人の前で爽彩さんに自慰行為を強要するといった事態に発展した。その頃には、爽彩さんの精神は限界を迎えていたのだった。

 取材班はイジメを受けていた爽彩さんが驚きの行動に出ていた事実を掴む。爽彩さんの心の悲鳴が聞こえてくるような事件は「死ぬから画像を消してください」旭川14歳女子死亡“ウッペツ川飛び込み”イジメ事件の全貌《警察が出動》で報じた。

飛び込み事件の現場となったウッペツ川 ©文藝春秋
飛び込み事件の現場となったウッペツ川 ©文藝春秋

 上級生による陰湿なイジメが始まってから数か月たった2019年の6月、爽彩さんが市内を流れるウッペツ川に飛び込むという事件が発生する。イジメグループが爽彩さんに強要したわいせつ画像を拡散すると脅したことが端緒だった。

 目撃者の通報により、警察が出動する事態にまで発展。これによって警察も爽彩さんがイジメの被害者であることを認識する。イジメグループの何人かは聴取を受けたものの、14歳未満のため刑事責任を問えず、最も重い処罰でも厳重注意にとどまった。爽彩さんのわいせつ画像は警察の手を通して削除させたものの、イジメグループの一人がバックアップから復元し、再び画像は流出してしまうことになった。

 結局、爽彩さんは転校を余儀なくされ、市内の別の中学校へ通うことになる。しかし、医師の診断により爽彩さんはPTSDになってしまっていることが判明する。新しい中学校に通うこともほとんどできずに自宅で引きこもりがちになってしまった。

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