文春オンライン
「悪いことは自分のせい。いいことは誰かのおかげ」大谷翔平の恩人“栗山英樹(62)”が語った「チャンスを棒に振る人・ものにする人」の違い

「悪いことは自分のせい。いいことは誰かのおかげ」大谷翔平の恩人“栗山英樹(62)”が語った「チャンスを棒に振る人・ものにする人」の違い

『信じ切る力』より

2024/03/26
note

 そう考えたら、チャンスを手に入れる価値に気づけると思います。どんな人がチャンスを手に入れるのか。どんなことをしていると、チャンスを手に入れられるのか。どういう人に、人はチャンスを与えたくなるのか。

 本当に頑張っていたら、誰かが見ていて、チャンスを与えます。いつも努力して、頑張り続けている姿は、誰かの目に留まる。そして間違いなく、神様も見ている。努力は絶対に無駄にはならないと僕は信じています。

 なかなかうまくいかなくて苦しいこともあるかもしれないけれど、その苦しみそのものが、その人の生き様になります。それは周囲に影響を与えたり、子どもたちに影響を与えたりもする。違うところで、プラスを生み出す可能性もあるのです。

ADVERTISEMENT

 こう考えてみると、自分だけでは見えてこない人生の意味があるのかもしれません。100年、1000年の単位で見ると、もしかすると大変な意味を生み出すかもしれない。そんな長い目で、大きな発想で人生を見つめてみるべきだと僕は思っています。

「絶対にできる」と譲らなかった源田の闘志

 たとえ不平不満があっても、それを超えるだけの努力をしようとする。それは必ず何かに生きてきます。また、その姿に周囲は気づきます。野球界では、まわりの選手たちがよく見ていて、「この人を」という空気が出てくるものです。

 WBCで源田壮亮がケガをしました。右手小指の骨折でした。それでも「絶対にできる」と源ちゃんは言っていました。コーチやマネージャーは、源ちゃんの闘志に心を動かされていました。

源田壮亮選手 ©getty

 直接、話をすると、やはり大丈夫だとしか言いません。それでも心配していると「侍ジャパンのために、何とかプレーしたいんです。力を尽くしたいんです」と、僕の目を真っ直ぐに見つめて言いました。

 その言葉にはものすごい熱量と、後ずさりしてしまうような迫力がありました。僕は、こんな選手になりたかったと思いました。そして、こんな選手を育てたかった、と。

 僕は源ちゃんを使い続けました。それは源ちゃんが、日本が優勝するために必要な選手だったからです。源ちゃんは、それだけの選手でした。そして源ちゃんに留まってもらったことで、チームはまさに一つになりました。

 試合に出ている選手、出ていない選手に関係なく、これだけ命がけで戦っているんだ、自分もやらなきゃ、と思わせたのです。僕は後にチームがまとまっていくのを見て、源ちゃんを残したことは間違っていなかったと思いました。

 監督の仕事は、決めることです。誰を使うのか。もちろん「こいつで勝つ」という思いもありますが、最後はそうではないと僕は思っています。先にも触れていますが、「誰とやって負けたら納得がいくのか」です。