「必要ないのに、たくさんの人たちの前で裸になっちゃったわ。でもいいのよ、わたしは自分の仕事をしていたんだから。最初は撮影の寸前に裸になって、合間は服を着てというふうに完璧にやろうと思っていたの。でも脱いだり着たりするたびに体のメイクが崩れて、またやり直しになって撮影が20分ぐらい遅れるの。だったらずっと裸のままでいようって(笑)」
そう自らネタにして振り返っている。
ボディラインがくっきり出るスーツでアクションをこなしたら…
そんな彼女の女優としての転機となったのが、クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト ライジング』(12年)だ。世界中で大ヒットした『ダークナイト』の続編で、アンは女性怪盗のキャットウーマン、セリーナ・カイル役を演じた。
この名キャラを演じるにあたり、アンは徹底した肉体改造で臨んだ。というのもキャットウーマンのコスチュームはボディラインがくっきり出る全身密着型のスーツで、さらにこれを着てアクションもこなす必要があった。
一部では「ダイエット」と報じられたが、実際のトレーニングはそれどころではなかった。さらに、ノーラン監督から、映画『インセプション』(10年)でジョセフ・ゴードン = レヴィットが2カ月の猛特訓で格闘シーンすべてを自ら演じ切った話を聞いて奮起したのだという。
「数カ月、とにかく体を鍛えることに集中して、その体型に合わせてスーツを作ってもらうことになった。じつは撮影が終わってからも、このときの習慣をいまだに続けているの。ジムに頻繁に行くようになって、ダンスのクラスを週に数回取って。さらにベジタリアンになって、野菜を大量に食べるようになった。キャットウーマンをやったおかげで、ずっと健康になれた気がする」
ちなみにアンはキャットウーマンが大好きだという。
「『プリティ・プリンセス』の取材のとき、記者の人たちから“お姫様になれて良かったですね”、“子どものころからの夢がかないましたね”なんて言われてニコニコしていたんだけど、本当は“わたしが子どものときに憧れていたのはキャットウーマンなの!”って叫びたかった(笑)」
そんなアンがアカデミー賞を獲得したのは、29歳で出演した『レ・ミゼラブル』。自慢の長い髪を切ってギザギザの坊主頭になり、「夢やぶれて」を歌う約5分間のノーカットシーンは伝説になり、「アンはたった5分でアカデミー賞を取った」とまで言われた。ゴールデングローブ賞でも助演女優賞を獲得し、人気にふさわしい箔も手に入れることになった。