「エマ・ストーンとロバート・ダウニー・Jr.のふるまいは差別的なものだった」「ミシェル・ヨー、キー・ホイ・クァンといったスター俳優でさえ、こんな扱いを受けるのか」「またアジア人が“透明化”されている」

「いや、それは考えすぎ」「これは差別とまで言えないのでは」「アカデミー賞は大スターでさえ緊張する大舞台、少々の非礼があっただけ」

 3月10日の第96回アカデミー賞にて起こった“事件”により、欧米におけるアジア系への差別論争が、要約すると上記のような声となってSNS上に吹き上がった 。

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今年度アカデミー賞の各俳優賞受賞者。左から、ロバート・ダウニー・Jr.(助演男優賞)、デヴァイン・ジョイ・ランドルフ(助演女優賞)、エマ・ストーン(主演女優賞)、キリアン・マーフィー(主演男優賞) ©時事通信社

トロフィー授与の瞬間に目を合わせることもなく…

 アカデミー賞の主演女優/男優賞、助演女優/男優賞の受賞者は、それぞれ前年の受賞者からトロフィーを受け取るのが慣例となっている。ところが今年は前年の受賞者を含む、過去の受賞者5人がプレゼンターとしてステージに並ぶ構成となっていた。

 それでもトロフィーを手渡すのは前年の受賞者だ。しかし、『オッペンハイマー』で助演男優賞を受賞したロバート・ダウニー・Jr.は壇上に上がると、トロフィーを持つキー・ホイ・クァンに全く目を向けず、片手でトロフィーだけを受け取った。

ABC NewsのYouTubeチャンネルより

 同じく壇上にいたティム・ロビンスやサム・ロックウェルとは握手やフィストバンプ(拳と拳を突き合わせるジェスチャー)を交わしたが、受賞者の名前が記された封筒を差し出すキー・ホイ・クァンとは目を合わせることもなく、オーディエンスに向かってトロフィーを振り上げ、拍手喝采を浴びた。

 世界中に生中継された大舞台で、キー・ホイ・クァンは、まるでトロフィーが置かれた物言わぬテーブルのように扱われたのだった。

マレーシア出身のミシェル・ヨーとベトナム出身のキー・ホイ・クァン。2人は『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022年)で第95回アカデミー賞の主演女優賞と助演男優賞を受賞し、今年度のプレゼンターとして登場した(キー・ホイ・クァンのインスタグラムより)

『哀れなるものたち』で主演女優賞を獲得したエマ・ストーンは、前年にアジア系として初めて主演女優賞を受賞したミシェル・ヨーからトロフィーを手渡されるはずだった。しかし、2人の手が共にまだトロフィーにあった瞬間、過去の受賞者として壇上にいたジェニファー・ローレンスがトロフィーを握り、そのままエマ・ストーンに手渡した。