1ページ目から読む
4/4ページ目

 そのなかでも里田はとくに勉強熱心だった印象がある。いまから15年ほど前、ある番組で彼女がかばんの中身をチェックされたところ、1冊の文庫本が出てきた。それは本田靖春の『誘拐』という1963年に起きた幼児誘拐殺人事件を題材にしたノンフィクションで、その渋い本のセレクトに驚いたものだ。本人はこのとき、いつもかばんに本を入れており、空き時間に読んでいると説明していた。

『ヘキサゴンⅡ』で人気者になっても、将来を心配して定期預金を組む堅実さも持っていた。田中将大と結婚したのは同番組終了の翌年、2012年だが、彼女のそうした性格を思えば、すでに球界きってのエースであった彼のパートナーとなったのも何ら不思議なことではなかった。

田中将大と里田まい ©時事通信社

 結婚2年目の2013年、田中は日本プロ野球史上最多の24連勝を成し遂げる活躍で、楽天を球団初のリーグ優勝、日本一に導く。この実績を引っ提げて彼は翌年、メジャーリーグに挑戦、里田も一緒に渡米した。アメリカ在住の7年間には2児を儲け、夫のサポートと子育てが中心の生活を送る。それだけに当時の里田には「私個人は何もしていない」という感覚があったらしい。しかし、新しい人間関係を築いたり、場にふさわしい立ち居振る舞いを心がけているうちに、自然に「いま私、いい勉強をさせてもらっているな」と思えるようになり、しだいに発信したいことやつくりたいものが出てきたという。

ADVERTISEMENT

「今後の目標は…」

 ここから4年ほど準備を重ね、田中の楽天復帰にともない日本に戻って3年目の昨年春には、オフィシャルサイトを開設、さらに念願のオリジナルブランドもスタートさせた。40歳を前に、彼女はこんなことを語っている。

《私、人生はずっと頑張り続けなくても、いくつかのポイントで全力を尽くせればOKなんじゃないかな、と思うんです。多分私は、その数回目の真っ最中。今が重要な時期だと感じています。今後の目標は……やっぱり家族の健康を第一に。その上で、過去に得た学びを生かして、自分が立ち上げたものを形にすること。40代なら、トライする体力も失敗してやり直すチャンスも十分あるはず。だから、もっと積極的にたくさんのことを吸収したい。そして、母としても妻としても人としても、“奥行きのある存在”になっていきたい! 今は、そう願っています》(『LEE』2023年7月号)

 アイドルからおバカタレント、さらに球界のトップスターの妻へという里田の人生はすでに十分ドラマチックだ。彼女がいま果敢に挑戦ができるのも、夫の田中と同じく、これまでさまざまな経験をくぐりぬけた末、地に足をつけて暮らしているからこそだろう。