最上 太郎さんは、みんなを包み込むんですよ……。2年間、一緒にツアーを回って思ったのは、音楽家としての才能があることはもちろん、良い演奏をするための努力を惜しまないということです。いくら成功を重ねても、さらに高みを目指そうという情熱がみんなを包み込むんです。
そして、とても純粋な方です。何歳になっても、音楽に対する熱意や思いを僕らに語ってくれる、少年のような心を持っているんですね。一方で、太郎さんの名前ひとつで何十、何百人ものアーティストやスタッフを束ねてもいるわけです。そんな器の大きさも素敵ですね。
――なるほど。
最上 実は仕事でご一緒する前は、少し“近づき難い”んじゃないかと思っていました。芸能人としてメディアにも多く出てますし、僕らクラシックの演奏家からすると、太郎さんのような方が活躍される世界はとても華やかに見えます(笑)。
でも、たとえば代表曲の「情熱大陸」は技術的にも、音楽的にもとても難解な曲。太郎さんもきっと日々、「もっとうまく演奏したい」という気持ちでヴァイオリンを弾いているように見えるんですね。そんな真面目でチャーミングな太郎さんと、今こうして一緒にお仕事ができるのは、とても光栄なことです。
「いつまでも“そっくりさん”ではいられない」
――これから挑戦してみたいことはありますか?
最上 実は昔、大きな挫折を繰り返した経験があります。高校は仙台の進学校でしたが、制服がなく、フケ顔だったのをいいことに、日中は街をほっつき歩いて、放課後に吹奏楽部にだけ顔を出すような生活でした。
そのせいでもちろん留年して結局自主退学。大検を取ったのちに、音楽家を育成する桐朋学園大学に入学しましたが、そこでもオーボエの練習や実技レッスンばかりのめり込んで、卒業しませんでした。
それでも高校も大学も中退してしまった僕みたいな人間が、努力し続けて、活躍できる場が見つかったし、必要として下さる方々に出会えた。若かった頃の僕のように挫折を味わったり、人生に迷っている中高生や若い人の励みになるようなことができたらなとは思っています。
――オーボエ奏者としてはいかがですか?