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――実現したら、観光客も移住者も増えそうですね。

加絵 ミュージアムハウスの企画は、東京都の支援を受けられることになったのですが、まだ課題は残っていて……。運用資金は都が補助してくれるものの、実際の建築や運用は村役場と協力しながら進めていく必要があります。ただ、小さい村なのでマンパワーがなく、なかなか企画が進まないんです。(2023年12月取材時点。1月に村長選挙が行われ、現在は企画実現に向けて動きが加速しているそう)

――行政と連携する難しさもあるのですね。

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加絵 青ヶ島には「ひんぎゃの塩」や「青酎」といった歴史的にも文化的にも価値の高い特産品がありますが、それらも自治体のサポートを受けずにやっています。先ほど話題に出た「島留学」も、「自治体を通すより早いから」という理由で、島民が個人で立ち上げたんですよ。

青ヶ島の特産品「青酎」

「自分の力で島を良くしよう」という、還住(島民たちが力を合わせて、噴火で無人島になった青ヶ島を開拓し、再興した1835年の出来事)の歴史を引き継いだ青ヶ島スピリッツは島の誇りです。でも、住居問題や少子化など、個人では解決が難しいものもあります。

青ヶ島で若い世代の議員が増えている理由

――そういえば、青ヶ島の投票率は毎回80%前後とかなり高いそうですね。

加絵 青ヶ島は人口約160人の小さな島ですが、「村」なので島の中に村議会があり、そこで村長を決めます。親族や友人が議員や村長をしているから、政治への興味関心が強いのかも。最近では30、40代の若い議員も増えてきているんですよ。

――先ほど、加絵さんの弟さんも議員だと言っていましたね。

加絵 はい。私の弟も含め、青ヶ島には「この島をもっと良くしたい」と思う若い人たちがたくさんいます。その人達が心置きなくチャレンジができる自治体になっていってほしい。

 若い人が村を引っ張り、もっと新しいチャレンジができる環境が整っていけば、島内の雇用が増えて、島にUターンする人や移住する人が増えていくと思うんです。

絶海の孤島・青ヶ島

――それが、加絵さんの理想の青ヶ島なのでしょうか?

加絵 うーん、正直今の暮らしには満足しているんですよ。でも島の未来を考えたら、今から動くべきことがあるんだろうなって。

 数年前に青ヶ島沖で金鉱脈が見つかるなど、この島が発展を遂げるチャンスはたくさん眠っています。でも、それを活かすための人が足りない。行政には、この課題にもっと向き合ってほしいですね。

 とはいえ、何か変えたいことがあるなら人任せにするのではなく、可能な限り自分で動く必要もある。私自身は、YouTubeやミュージアムハウスの計画を通して、島の未来のためにできることをしていきたいと思っています。

写真=佐々木加絵さん提供

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