本田氏は2月、ロサンゼルスで開催されたアニー賞の授賞式に出席し、キャラクターアニメーション賞受賞のスピーチを行ったが、元来「大勢の人の前で喋るのは苦手なんです」という。
「いやもう、受賞スピーチというのが憂鬱でしょうがなかったんです。他の作品が獲ってくれたらいいな、ぐらいに思っていましたから。スピーチの原稿はジブリの誰かが何か考えてくれるのかなと思ったら、そんなこともなくて(笑)。授賞式前のパーティでワインを飲んで誤魔化したりして。
で、授賞式が始まってみたら、みんなスピーチが上手いんですよ! 英語だから何を言ってるのかさっぱりわからないんだけども、次々と現れる登壇者が客席を沸かせている。『ウケをとらなきゃ恰好がつかないかな? えらいところに来てしまったなあ』と。
「本田さん! 獲りましたよ」「え? やばいやばい!」
ところが、時間が経つにつれて、さっき飲んだワインの酔いが回ってきて、英語もよくわからず、ずっと座っていたもんだから、少し眠たくなってきてね(笑)。
しばらくウトウトしていたら、急にスポットライトがバーン! と僕に当たったんです。眩しくて起きたんですが、わけもわからずボーッとしていると、『本田さん! 本田さん! 獲りましたよ』って近くに座っていた同僚が声をかけてくれて。『え? やばいやばい!』と。そこからどうやって壇上に上がったのか。誰かに案内されたような気がしますが……あまり覚えていません。今振り返ってみても、あれは人生最大のピンチだったと思います(笑)」
本田氏が「人生最大のピンチ」に即興で披露したスピーチの全容をはじめ、デジタル作品が主となる今、全編手描きの『君たち』が評価される理由、宮﨑駿監督の次回作などについて明らかにしたインタビュー全文は4月10日(水)発売の「文藝春秋」5月号で掲載している。「文藝春秋 電子版」では4月9日(火)に公開。
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