経済番組「ブレイクスルー」(テレビ東京系、毎週土曜日午前10時30分)のメインキャスターを4月6日から務める小説家の真山仁さんは今年デビュー20周年を迎える。『ハゲタカ』シリーズは累計270万部を突破し、『ロッキード』は本格的ノンフィクションとしては異例のロングセラーとなっている。『疑う力』を上梓したばかりの真山さんが、作家としての原点を明かす。

「ブレイクスルー」テレビ東京系で毎週土曜午前10時30分から放送 ©テレビ東京

 自分では当たり前と思っていることにこそ、才能が隠されています。たとえば、歌が上手な人や足が速い人に「なんで?」と聞いたら、その人たちは「誰でもできるでしょ」と答えるでしょう。

 私の場合、残念なことにそれは「他の人たちに見えているものとは違うところが見える」という才能でした。多感な小学校高学年の頃、なぜ自分は生まれてきたのか、何に向いているのかを考えるようになって、そのことに気づきました。

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 たとえば、サッカーのとき。他の子がボールを追いかけるなか、当時、細くて小柄だった私は一人離れた場所にいました。ボールがこちらに飛んでくると、そのまま一人でゴールに向かうんです。「ボールは1個しかないのに、なんで全員で追いかけるわけ?」と考える子だったんです。

「なんで、わかるの?」友人の言葉で自分の才能に気づいた

 みんなと同じ方向を向かないというのは、学級会でもそうでした。

 私は妙に正義感が強かったんです。先生から「あなたの正義感は凶器だ。正しいと思ったら、みんなをなぎたおしてでも、言うことを聞かせようとする。それはよくないことだ」と言われて、黙って話を聞く訓練をしました。

 学級会では最初の10分は静かに聞いています。先生の意を汲んだ優等生の提案に、他のみんながなんとなく同意して決まりそうなところで、私は違和感を覚えたら、「こういうときにどうするのか」とみんなが見ていない点を指摘したり、賛成者に「この決定によってどうなるかがわかって賛成しているのか」と問いただしていました。ただし、文句を言うだけではなく、こうしたほうがいいという提案もします。やがて私の提案を支持する人が増えて、逆転して決着する。そんなことばかりやっていましたね。

 自分としては当たり前のことをしているだけなんですが、友達から「なんで、あんなことまでわかるの? 言われるまで考えもしなかった」と言われた。それで自分の才能に気づいたんです。

 この話を講演会ですると、「そういう子供は嫌われたでしょう」という反応が返ってきます。でも、そんなことはありませんでした。あとで「ごめんな。お前のことを責めたかったんじゃなくて、助けたんやで」とフォローしていました。大阪では、「一人だけまた綺麗事を言って」というふうにはなりません。終わりよければすべてよしです。