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 本泉 あせび役を演じながら、登場人物を出すタイミングなども、原作と照らし合わせて、非常に計算し尽くされている……という印象を受けました。

 阿部 『単』と『主』で一つのアニメ作品をというご提案は、とても嬉しかったんです。2冊に分けて書いた物語を一つに合わせることができるなら、こんなに良いことはない、と思っていましたから。同時に、ものすごく難しい挑戦でもあったわけで、本当に現場の方々の努力で出来た脚本だと思います。

 本泉 コミカライズと原作とでも、比較すると后選びのシーンであせびが口にする台詞など、かなりインパクトのある箇所で変更がありますよね。さらに、アニメ化にあたってもオリジナルの要素が登場しています。

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 阿部 そうなんです。コミカライズでは原作での反省点を松崎夏未(まつざき・なつみ)先生にお伝えして、修正を入れている部分があります。これは今回も変わらず、原作、コミカライズと、シリーズが開始してから今日までに得た知見をお伝えしました。基本的な考えとして、媒体を問わず、新しく出るもののほうが面白くあってほしい、という思いが根本にあります。ですから、原作とは異なる時系列の導入なども、私の方から提案させていただいています。今は、それがアニメにとって良い影響であってくれと祈るばかりです。

あせび、浜木綿の難しさ

 本泉 私たちが今回応募したテープオーディションに、阿部先生も携わられたと伺いました。

 阿部 オーディションの時点で、お二人は本当に輝いていらっしゃいました。候補者の方全員の提出音源を3、4回は聞いて、全てにコメントを付けて、制作サイドへお戻ししていたのですが、皆さんのお声を通して私が特に注目していたのは、登場人物の“解釈”なんです。私が持っている登場人物のイメージを、制作サイドと共有してもらう意味も込めてコメントを付けていました。制作側と私の間で解釈の違いは必ずあったはずですが、私はアフレコ現場には立ち会えませんから。できる限り、感じたことは全てお伝えするようにしていましたね。

 本泉 オーディション原稿は監督が脚本から色々な箇所を集めて構成したと思うのですが、あせびのある側面が見える場面だけが集められていたんです。

 阿部 確かにそうでしたね!

 本泉 オーディションは、声優側が持っているキャラクターのメタ的な解釈、喜怒哀楽や表現できる感情の幅を見せ、「私はこういうこともできます」と制作側に伝える意味合いがあります。でも、原稿上では、あせびの持つ一面だけが取り上げられていた。これは何か狙いがあるのかな……とも考えました。結局、原稿上の各場面であせびがどういう心境でいたかの一点に集中して、私の思うあせび像をしっかり考え抜いた上で、提出させていただきました。

東家の二の姫・あせびを演じる本泉莉奈さん