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 東さんは、せっかく伊勢に来たのだからと、われわれ一同に、すし店で一席設けてくれ、ごちそうしてもらった記憶があります。

 この日は伊勢に泊まらず、日帰りしました。

 よそのシマでのシノギは気を使うもので、関係者にはちゃんとお礼をしておかないと次が頼めません。何より杉野組のメンツがあります。レイコを確保してくれた大阪のミヨシさんにも10万円の手数料を振り込み、岐阜から三重までついてきた部屋住み二人には50万円ずつ渡しました。少し額が多いかなと思いましたが、これは同輩への「恩着せ」の意味もありました。

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 事務所に帰ると、ほかの部屋住みたちが群がってきて、おこづかいをせがみます。相当儲かったと思われていたようですが、そんなことはありません。「儲けなんか、旅費で消えちまったよ」と言いながらも、事務所の同輩たちに10万円ほど投げたかもしれません。

借金を返し終えたレイコのその後

 数年後、前借のカネ350万円を払い終えたと思えるころに渡鹿野島に行き、レイコに会いました。「レイコ、久しぶり」と声をかけましたが、レイコは私が誰かわからないのです。心を病んだのか、記憶喪失になっているようでした。やはり、女が身体を売る仕事は心が壊れる有害業務だと、あらためて感じた出来事です。