大王製紙会長時代の2011年、カジノでの使用目的で子会社7社から総額106億8000万円を借り入れていた事実が発覚。会社法違反の容疑で逮捕され懲役4年の実刑判決を受け服役した井川意高氏(59)は、なぜカジノにのめり込んだのだろうか。

 ここでは半生を振り返った『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』(幻冬舎文庫)より一部抜粋。“総額2兆円負けた”という男が底なし沼に引きずり込まれた大きすぎるビギナーズ・ラックを語る。(全3回の1回目/第2回第3回を読む)

 

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初めてカジノに挑んだのはオーストラリアだった

 オーストラリアの初カジノでは、事実上の丁半バクチであるバカラにも挑戦してみた。バカラについては勝ち負けにゲーム性が入りこむ余地はなく、定石もへったくれもない。バカラでは、最初にプレイヤーとバンカー(胴元)に2枚のカードが配られ、カードの合計点数が9により近いほうが勝ちとなる。プレイヤーとバンカーの勝負ではなく、どちらが勝つかを予想するギャンブルであり、払い戻しは1倍だ(1ドル賭けて勝てば、2ドル戻ってくる)。

 Aは1点、2~9はそのままの点数、10とJ、Q、Kは0点と数える。2枚のカードの数を足し、その1の位の数字が点数になる(仮に8と9ならば、両方を足した17の「7」が自の点数)。

 最初に2枚のカードを配り、プレイヤーかバンカーいずれかの合計点が8~9点の場合はそのまま勝負となる。プレイヤーは手持ちの合計が6~7点の場合、同様にそれ以上カードは引けない。その場合、バンカーは手持ちのカードが5点以下ならば、3枚目を引く。

 プレイヤーは合計が5点以下ならば3枚目のカードを引くことになるが、そのときバンカーは手持ちの点数とプレイヤーの点数の関係性により、3枚目を引くか、引かないか決まる。そのルールは少々複雑なので、ここでは省略する。

 バカラでいくら頭脳プレイを展開しようとしても、頭を使う余地はどこにもない。勝つか負けるかは運次第だ。運に賭けるしかないからこそ、頭脳プレイのゲームとは違った醍醐味がある。今の私の立場でこんなことを言うのは自でもいかにも馬鹿だと思うのだが、偶然性と勘頼みのバカラは実にエキサイティングなギャンブルだった。