大王製紙会長時代の2011年、カジノでの使用目的で子会社7社から総額106億8000万円を借り入れていた事実が発覚。会社法違反の容疑で逮捕され懲役4年の実刑判決を受け服役した井川意高氏(59)は、少しずつカジノにのめり込んでいったという。
ここでは半生を振り返った『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』(幻冬舎文庫)より一部抜粋。転落の大きなきっかけとなる、マカオでの勝負を語った。(全3回の2回目/前編、続きを読む)
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ラスベガスで失ったアブク銭のような4000万円
初めてのカジノで100万円が2000万円に化けたのは、96~97年ころの話だ。あの大勝ちをきっかけに、一気にカジノにのめりこんでいったわけではない。
勤め人である私は、長期休暇はせいぜい年に2回しか取れない。夏休みと冬休みのうち、どちらかは子どもたちを海外旅行にでも連れていってあげる必要がある。そのかわり残りの1回は、自分の好きなところに行かせてもらった。
ラスベガスはカジノだけでなく、子どもたちが楽しめるサーカスやショー、遊園地など遊び場がたくさんある。たとえ家族がいようとも問題なく、ギャンブル好きにカネをわせる仕組みが完成されているわけだ。
子どもも大人も楽しめるため、私も夏休みをとって家族でラスベガスに旅行に出かけた。だが、なにしろフライトは片道10時間以上かかるし、半日も時差があるために体力的に負担が大きい。本業の仕事も忙しく、ラスベガスへは1年に1回遊びに出かけるかどうかという程度だった。
いつぞや海外出張に出かけたときに1日空きができたため、ポケットに70万円を突っこんで1日限定でラスベガスまで勝負をしにいったことがある。このときは途中まで大勝ちを続け、一時はなんと4000万円ものプラスになった。ところがそれから急激に負けが込み、最終的には種銭の70万円まで全部スッてしまった。