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 かつてのマカオは、街角でマフィアが撃ち合いをしていたりとかなり治安が悪かったと聞いたことがある。そんな物騒なところへは行きたくないな……と思っていたものの、政府主導の浄化作戦によって治安は格段に良くなったという。カジノも監視カメラを設置するなど不正行為を厳しく取り締まっているため、イカサマによってぼったくられる心配もない――。

 そんな飲み屋話をきっかけに、K氏の案内で03年ころから時々マカオに遊びにいくようになった。初めてマカオに行ったときには、種銭の300万円は全部スッてしまった。当時はカジノでカネを借りてまで勝負するという発想がなかったため、300万円のマイナスでおとなしく帰国している。

 2回目にマカオで2泊3日の勝負をしたときには、やはり種銭の100万円を失ってしまった。このときに初めてジャンケットを通じてカネを借りるシステムを知り、借りた500万円を新たな種銭としてリベンジを期した。その500万円もゼロになってしまおうかという終盤、最後の30分で奇跡が起きた。

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「えい、最後に100万円を全賭けしてしまえ」

 それまではちびちび小さく勝負を重ねていたわけだが、帰国の時間がいよいよ迫ってきた。内心ビクビクしつつも、「えい、最後に100万円を全賭けしてしまえ」

 私は思いきった勝負に出た。そこから一気に600万円以上を取り返し、500万円の借金をその場で返しただけでなく、元の種銭100万円まで取り返すことができたのだ。こういうミラクルがあるから、人間はカジノにやみつきになってしまうのだろう。

 ラスベガスにもカジノホテルを構える「Wynn(ウィン)」が06年にマカオに進出してからは、年に2~3回マカオに出かけるようになった。200~300万円の種銭をポケットに突っこみ、ゴージャスな「ウィン・マカオ」のカジノで勝負するのが私のたまの息抜き兼楽しみになっていった。

 07年6月に大王製紙の社長に就任してからおよそ1年後、マカオでの勝負の仕方が徐々にエスカレートしていった。カジノがもたらす快楽に没入したことは私の問題であって、K氏には何の責任もない。ただ、K氏がマカオでジャンケットの資格を取得したことが、転落の大きなきっかけになったことはたしかだった。