ジャンケットが誘うVIPルームの罠
ラスベガスでもマカオでもどこのカジノでも、大勢の客が出入りする「ザラ場」(平場)と個室は棲みけがなされている。例えば「ウィン」や「MGM」といったホテルでは、巨大な1フロアがすべてカジノ場になっており、客はフロアを移動しながらポーカーやブラックジャック、バカラやルーレット、スロットマシンなどいくつものゲームを一日中いつでも楽しめる。
上階のホテルに部屋を押さえておけば、すぐに下のフロアに下りてカジノを始めることができるし、疲れたら部屋に戻って仮眠を取ることもできる。その気になれば、24時間いつでもカジノを中心に時間をえるシステムになっている。
ザラ場で何百万円、何千万円を賭けて大勝負をする客はそう多くはない。1香港ドル(約12・6円)から遊べるスロットマシンもあるため、そこで粘れば数千円で何時間も遊ぶことだってできる。
そうした観光客を目当てにしていては、カジノの収益はさして上がらない。ではどこでカネ儲けをしているのか。それは、VIPルームに上客を呼びこみ、高待遇をしながらどんどんカネを投入させるのだ。
VIPルームとは、たいがいの場合、ホテルの上階にあるセミスイートルームやスイートルームのような場所だとイメージしてもらえばいい。VIP客の場合、入り口も駐車場もほかの客とは別の場所に設置されている。専用スペースにクルマを停め、専用エレベーターで人目につかないように部屋に直行できる。
なるべく人目につかないよう考え抜かれた動線を確保し、部屋に入るときも出るときもプライバシーを保っている。ほかの客がワイワイ騒ぐ声も聞こえない中、自専用の部屋でゆったりカジノを楽しめる。これがVIPルームだと言えば、わかりやすいかもしれない。
賭け金が小さいザラ場は、いわばブティックにおけるショーウィンドウのようなものだ。芸能人や有名実業家であれば、なおのこと人目につかないところで勝負したがるものだ。そうした人々を大金が動く別室に囲いこみながら、カジノは大きな収益を上げているのだ。