「まあいいや。オレは4000万円負けたわけじゃない。70万円負けただけだ」
そう自分を納得させて、おとなしくラスベガスをあとにした。当時はカジノで遊ぶことをおもしろいとは思っていたものの、年に何度もオーストラリアやラスベガスまで遊びにいきたいというほどの中毒症状に陥っていたわけではない。
相手のことは気にしたくない、心いくまでギャンブルを楽しみたい……
カジノに行かなくとも、麻雀をしていれば充分だった。4人の面子さえ集まれば、いつでも遊ぶことはできた。
だが学生と違って、社会人は翌日のことを気にせず麻雀ばかりやっているわけにはいかない。月曜日からの仕事のことを考えると、金曜日の夜から土日ぶっ通しで麻雀をやる人間はそうそういないものだ。相手のことを気にせず心ゆくまでギャンブルを楽しみたい、そんな気持ちが心の奥底にあったのは事実だ。
「カジノで一度腰を下ろせば、日がな一日ギャンブルを楽しむことができるのだが……」
そんな私に大きな転機が訪れる。のちにジャンケット(仲介業者)としてマカオのVIPルームに私を手引きすることになる、K氏との出会いだ。
羽田空港からマカオまでわずか6時間、アクセスも容易だ
世界のカジノ情勢に疎かったころの私は、「カジノといえばラスベガスとオーストラリア、それにモナコ」程度の知識しかもち合わせていなかった。
K氏と六本木の飲み屋で知り合ったのは、90年代だっただろうか。彼から、マカオのカジノの訪問客がどんどん伸びているという話を聞いた。マカオは香港からフェリーに乗れば1時間ほどで着くため、羽田空港から片道6時間もあれば行くことができる。ラスベガスやオーストラリアに出かけることを思えば、アクセスはかなり容易だ。