周辺国では日本の防衛費は「中程度」
一見して明らかなのは、2000年代に入ってから中国の防衛費が各国を引き離していることと、韓国・ロシアの増加傾向、そして日本・台湾の横ばい傾向だ。1990年代の一時期、日本はアメリカに次ぐ世界2位の防衛費であった時期もあったが、今や周辺国の間では中程度と言ってもいい。
今や、経済成長を背景に中国の防衛費が周辺国を圧倒している状況にある。周辺国の増加ペースを遥かに超えており、2016年の段階で日本の防衛費の5倍以上になっている。昨年の防衛費から1%程度増えて過去最大と騒がれる日本の状況とは、天と地ほどの開きがあるかもしれない。
上のグラフでは中国の伸びが他国を引き離しすぎて、中国以外の伸びが分かりにくい。そこで、中国を除外した各国のグラフを見てみよう。
日本の経済停滞に根本要因がある
1990年代に防衛費が大きく落ち込んでいたロシアは、原油高を背景とした経済立て直しにより持ち直し、2000年代後期には日本を抜いている。また、韓国も右肩上がりの増加を続けており、日本の防衛費を抜くのは時間の問題と思われる。
韓国の防衛費が日本を上回ることは、多くの人に意外性を持って受け止められるかもしれない。しかし、これはある意味必然なのだ。この20年間、日本のGDPに占める防衛費の割合は1%で推移しており、同じく韓国のGDPに占める防衛費の割合は2%台で推移している。
一方、「失われた20年」と呼ばれる経済停滞の真っ只中にあった日本に対し、韓国は経済危機を経たものの成長を続けている。今後、日本の経済が停滞しGDPが伸び悩む中、日本の防衛費の支出割合が変わらない以上、韓国のGDPが日本の4割近くに達した時点で、韓国が日本の防衛費を抜くのは必然なのだ。
恐らく、このペースでいけば、10年以内に韓国が日本の防衛費を抜くことは十分に考えられることだろう。結局のところ、日本が抱える多くの問題と同様に、日本の経済停滞に根本要因がある。「過去最大の防衛費」とはいいつつも、実態としては日本の相対的な退潮を示していると見ることもできるだろう。