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新型護衛艦2隻の建造に992億円

 日本の防衛費の個々の項目を見てみよう。

 新規に行われる事業として目新しいものは、多様な任務に対応しつつコンパクト化を両立させた3,900トンの新型護衛艦2隻の建造(992億円)、イージス艦に搭載する新型対空ミサイルのスタンダードSM-6の試験弾の購入(21億円)、長距離を飛翔する巡航ミサイルであるスタンド・オフ・ミサイルの導入(22億円)、将来の経空脅威・弾道ミサイルに対応する次期警戒管制レーダ装置の開発(87億円)などがある。

 ここで、新規事業の中で主だったものをリスト化してみた。

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 こうして改めて新規事業とその費用を見てみると、メディアで注目されたイージス・アショアや長距離巡航ミサイル導入が今年度予算に与えた影響自体は実は小さく、金額だけ見れば新型護衛艦2隻の金額が大きい。しかし、組織別に見れば海上自衛隊の今年度予算は29年度予算より減額している。新規事業全体を見ると、今年度以降に大きな出費を伴うものもあるが、今年度予算に与えるインパクトはそれほどでもない。

昨年10月に行われた、あさひ型護衛艦「しらぬい」の進水式 (写真:防衛省サイトより)

 今年度の防衛予算を見渡すと、従来からのミサイル防衛・島嶼防衛の重点化が継続していると言える。イージス・アショアやスタンド・オフ・ミサイルなど、具体的な装備品の名前が出ただけで、実質的には従来路線のままといえるだろう。

目に見えない部分での戦いが深刻化しているが……

 一方で、重要項目とは言われつつも、2年連続で減額された項目がある。それがサイバー関連経費だ。29年度に124億円だったサイバー関連経費は、今年度は110億円に減少している。大幅な増額があった28年度は監視機材・分析装置といった費用のかかる機材整備が行われたが、それが落ち着いた29年度の減額はまだ理解できるものであった。しかし、今年度も引き続き減額になった点は解せない。

我が国のサイバーセキュリティの行方は…… ©iStock.com

 今年度はサイバー防衛隊の隊員を110名から150名へ増員する計画である。その一方、北朝鮮でサイバー戦に携わる兵士は2016年の推計で6,800人を超え、近い将来1万人に達するとみられている。実際、北朝鮮が関与しているとみられるサイバー攻撃が世界で相次いで発生している中、日本のサイバーの分野の取り組みが明らかに遅れてはいまいか。

 今年度の防衛予算をめぐる報道を見ても、イージス・アショアのような目で見える・実態のあるものに注目が集まりやすい。だが、目に見えない部分での戦いが深刻化している今、目に見えない部分がもっと注目されてもいいと思うが……。