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 加えてこの2冊は、人生の折り返し地点を迎えた鈴木おさむというひとりの男性の、人生前半戦の総括書でもある。これから「セカンドライフ」へ挑むにあたって、これまでの自分を棚卸ししてすべてを人目に晒すことが必要だったのだろう。

 思うに中年と呼ばれる年頃に差しかかった人は、こぞって鈴木おさむに倣い、人生前半戦の総括をしたほうがいい。というのも、おそらくその世代の多くが実感しているはずだから。「ここらが人生の折り返しか……。であればいったんリセットしないと、前半戦と同じ考えやペースではとうていゴールまで歩き切れないぞ」と。

鈴木おさむさん ©文藝春秋

エンタメからビジネスの世界へ

 これだけ人の寿命が伸びたいま、だれもが人生を二毛作として考える必要が生じているのだ。もちろん鈴木おさむのように、実際に従事している仕事や居場所をガラリと変えるまでには至らぬ人が多いのはわかる。ならばせめて、50歳前後を迎えたらいったん「ひとつめの人生」を総括し、「ふたつめの人生」へ向かう発射台を築くことを意識するほうがいい。それが人生百年時代を生きる大切な知恵となっていきそうだ。

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 聞くところでは断筆後の鈴木おさむは、ベンチャーファンドを立ち上げスタートアップ企業の応援に乗り出すという。テレビ・エンターテインメントの世界から舞台を移し、今度はビジネス分野で才能を見出さんとするわけだ。

 セカンドライフに踏み出したといっても、世の中をおもしろくしたいという一念は、以前と変わらずなのだなと思えてうれしくなる。

『最後のテレビ論』で鈴木おさむは、こんな言葉も記している。

「僕は常々、『ライフ イズ エンターテインメント』だと思っている。

 人の数だけ人生があり、その分だけエンターテインメントがある。

 人生こそ最強のコンテンツ。」

 本人が身をもって示しているからいっそう、彼の言葉は人の胸に強く響く。