『文藝春秋』2024年4月号に掲載された「コロナワクチン後遺症の真実」の大反響を受けて、この記事を執筆した京都大学名誉教授の福島雅典氏をお招きして、読者・視聴者からの質問に答えるウェビナーを開催。事前に質問を募集したところ、皆さまから寄せられた質問は100件を超えました(『文藝春秋』2024年5月号には福島氏が読者から寄せられた疑問に答える記事が別途掲載されています)。

 

ワクチン接種後の不安について適切な回答を得られる相談先がわからず、お困りの方は少なくありません。福島氏には、ワクチン後遺症の可能性について具体的な症例を挙げて見解をうかがったほか、ワクチンによる健康被害の救済制度に関するお悩み、健康に問題を感じている方へのアドバイスなど、幅広い質問に回答いただきました。聞き手を務めたのは、ジャーナリストの秋山千佳氏です。

問題提起は「サイエンス」の実践である

 ——今回、たくさんの質問を読者からいただいていますが、このような状況を福島先生はどのように受け止めていますか。

 福島 たくさんのお読みになった方が疑問に思っている。今までどこにぶつけていいのかわからなかったから、皆さんも質問を寄せられたと思うんですよね。

福島氏(左)と秋山氏 ©文藝春秋

 ——では1つ目の質問です。これは助産師さんの方からいただきました。「『文藝春秋』4月号の記事に対して『雑誌に論考を掲載するよりも論文にせよ』という批判をネットではよく目にします。福島先生の反論を教えてください」という質問です。

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 福島 『文藝春秋』で書いたことは全て論文にしているんですね。新型コロナウイルスが日本に上陸したときから、折に触れて論文にしています。

 これらの論文を全てまとめて、去年の秋口に出版した本が『COVID-19パンデミックと向き合った1000日 ~ 一臨床科学者の記録:新型コロナウイルス感染症関連 福島雅典論文集』です。LHS研究所のホームページで全文をご覧いただけます。

 ——視聴者の皆さんの中には、福島先生の経歴をご存じない方も多いと思います。そこで、最初に福島先生のキャリアを3つのキーワードで整理したスライドをご用意しました。

 1つ目として挙げられているのが、福島先生は日本のがん内科医、いわゆる腫瘍内科医の先駆けでいらっしゃるということですね。

 福島 そうです。私が腫瘍内科という言葉を初めて使うようにしました。アメリカの臨床腫瘍学会のメンバーになった日本人の第一号が私です。京都大学では、がんの外来化学療法部を日本で初めて設置しました。

©文藝春秋

 ——今回いただいたご質問を見ていると「ワクチンを打ったら抗がん剤も使わないほうが良いんだろうか」と悩んでいる方もおられるようです。ただ、先生は抗がん剤を否定しているわけではないんですよね。

 福島 ぜんぜん違います。『文藝春秋』4月号であえて紹介したように、私の妹がワクチン4回接種後に乳がんを発症したときにはびっくりしましたが、今は抗がん剤を半年使っても問題なく過ごしています。

 ——福島先生の経歴では、2つ目がワクチン問題への発言とつながる部分が大きいと思うのですが、日本初の薬剤疫学の講座を京都大学で創設したと。

 福島 当時、日本で起きていた薬害問題を懸念している先生方といっしょに、京都大学で薬剤疫学の講座を立ち上げることになりました。

 ——3つめが、再生医療をはじめとして日本アカデミア発の医療イノベーションの数々を承認・市販というところまで導いてこられたと。

 実は、福島先生と私の最初の出会いは、コロナワクチンの問題が起きる以前、先生が承認・市販まで導いた再生医療の薬剤を取材させていただいた機会が最初でした。

 このように、福島先生は薬剤を世に出す立役者でもいらっしゃるので、「全ての薬を否定する立場ではない」と、ご覧の皆様には最初に伝えておきたいところですね。

 福島 そうです。「サイエンス」をきちんと実践することが私の性分なんです。薬やワクチンを「否定する」なんていうことではありません。

「副反応」は国際的に通用しない言葉

 ——福島先生の論文には「国が副作用として認めたもの以外にも、時間的関係はあるけれども因果関係が確定していない健康上の問題(有害事象)が含まれている」という批判もあるようですが、この点についていかがでしょうか。

 福島 まず、医薬品の用語法は国際的に定められているのですが、日本では「副反応」と紛らわしい言葉を使っていますね。しかし、国際的に使われている用語は「薬物有害反応(adverse drug reaction)」だけなんです。これはICH(医薬品規制調和国際会議)のガイドラインに明記されています。

 ただ、欧米では「副作用(side effect)」を薬物有害反応として理解する人も多いので、アメリカの政府機関・CDC(疾病予防管理センター)などでは「薬物有害反応(副作用とも呼ばれる)」といったことが書かれています。

 用語とは、きちんと定義されて使われているものです。日本では、「有害事象が自発的に報告された場合は、たとえ因果関係について不明又は明確に述べられていなくても、規制当局への報告目的からすれば、副作用の定義を満たすことになる」と、厚労省が通知しています。

 ですから、「自発報告」があれば、これはもう副作用と呼ぶべきです。しかし、わけのわからない「副反応」なんていう言葉を流布して「副反応なんだから副作用とは違うでしょ」と言っている。私からすれば「国語をもう一度勉強しなさい」と言いたい。

 ——簡単に一言で表してしまうならば、「副作用」という言葉の定義は、国際的に定められていると。そして、厚労省が「副作用とはこういう定義ですよ」と通知している内容は福島先生が言うように「有害事象として報告が上がっているものは全てを副作用として認めるんだよ」ということですね。

 福島 ええ、そういうことです。それでないとサイエンスとは言えません。