この日、能登空港(のと里山空港)の到着口には数名の報道陣が待ち構えていた。大物の政治家でも視察にやってくるのだろうか――そう思って訊ねてみると、週3便(3往復)に限定されていた羽田と能登を結ぶ臨時便が、毎日1便(1往復)になったということで、利用客の声を拾おうとしているという。

 空港から能登全域への交通手段が回復をみせ、ボランティアの受け入れ体制も整ってきたことから、運航する全日空は増便を決めたようだ。

 一方で、能登空港から徒歩で2分ほどの日本航空石川高校のキャンパスは閑散としていた。全国から集まる同校の生徒は現在、東京の明星大学青梅キャンパスの使われていない校舎で生活しているため、校内には野球部員の姿しかなかった。教職員も、野球部の監督やコーチのほか、キャンパスの復旧を担当する中村博昭事務長(管理担当理事長補佐)など数名の職員しかいない。

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日本航空石川の中村隆監督 筆者撮影

トイレは仮設、教室内に立てたテントが“個室”がわり

 むしろ目立つのは被災地の調査にあたる、全国から派遣された総務省の人たちだ。1月1日の震災の直後から、能登空港に隣接した同校は自衛隊や消防隊、電力会社の人々を受け入れ、復興支援の最前線の基地となっていた。自衛隊はすでに撤退したが、震災の状況を調査する総務省の担当者らは現在も暮らしているという。中村事務長が学校の敷地内を案内してくれた。

「教室や体育館に設置したテントで暮らされているのは、復興支援や物資の配布を目的とした短期滞在の方で、主に総務省から派遣された全国の自治体の公務員の方々です。だいたい1週間ぐらい滞在されて、全国の自治体に戻って行かれます」

キャンパス内にある大学校の教室にテントを立てて「個室」がわりにして生活している

 短期滞在者が寝泊まりする学校の校舎は電気こそ通っているものの、水道は断水が続いているためトイレは外の仮設トイレを利用するしかない。現在は、全国の自治体から集まったおおよそ180人ほどがテントに暮らしているという。

 そして、期限の決まっていない長期滞在者には、生徒用の寮の6畳ほどの部屋を個室として提供している。現在は200人ほどが滞在し、5月に入ると250人ぐらいにまで増える予定だという。

「やはり全国の自治体の復興担当者が主になり、インフラ整備や被災状況の確認のために長期滞在されています。また、輪島市や珠洲市の小学校から中学校、高校で働く教職員の方々もいらっしゃいます。被害の酷いところでは、倒壊したアパートも多く、新しく赴任された先生たちの住む部屋がない。本校からだとだいたい能登半島全域に1時間以内で行くことが可能なんです」