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「昔はいつ死んでもいいと思っていた」…暗い作品ばかり描いていた“49歳・美人漫画家”が「明るい美容漫画」で再ブレイクできた理由

漫画家・まんきつさんインタビュー #2

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まんきつ 結局、サウナってそんなに事件が起きる場所ではないじゃないですか(笑)。週刊連載でいっぱいいっぱいでしたし、静かな空間に私ひとりで行くので、どうしてもモノローグが増えて自問自答みたいな内容になっちゃうんですよね。でも『美容バカ』は、編集の柳川さんが登場人物にもなってくれて、対話形式で進められるのがすごく楽です。すごく自分らしく、のびのび描けています。

――これまでの作品と、画風も変わった印象です。

まんきつ 私は人体が全然描けないので、『湯遊ワンダーランド』のときは難しいポーズなどはアシスタントさんにお任せしていたんですよ……。でも漫画制作に使うソフトを「ComicStudio」から「CLIP STUDIO PAINT」に変えたら、3Dデッサン人形の機能が使えるようになったので、人物も全部自分で描けるようになりました(笑)。『美容バカ』では、なるべく描き込みを増やすようにしています。

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――『美容バカ』は万人にウケそうなテイストなので、初めてのまんきつ作品としても良さそうですよね。まんきつさんといえば、2019年にペンネームを「まんしゅうきつこ」から改名しましたが、まんきつ名義では『美容バカ』が初の作品でしたっけ……?

まんきつ まんきつ名義で『アル中ワンダーランド』が文庫化されましたが、「まんきつ」名義の新作漫画となると『犬々ワンダーランド』が最初ですね。

――失礼しました! しかし、こう振り返ってみると作品数が多いですね。

まんきつ いやぁ、自分としては活動年数のわりに少ないんじゃないかと……。

©細田忠/文藝春秋

柳川 いえいえ、エッセイ漫画は数冊出したきりになる作家さんが多いジャンルなので、続けられている時点ですごいですよ!

まんきつ 周りが優秀な方ばかりなので、それに支えられています(照)。

美容は手っ取り早く達成感を得られる

――昔のまんきつさんは、自分の受けた傷全部を描くような漫画家というイメージでした。その頃と比べると、『美容バカ』は「ここまでは描くけど、ここからは描かない」という線引きをきっちりしているような印象です。

まんきつ 我ながら、昔の作風は痛々しいですよね。読む人をすごく選ぶ作風だったと思います。柳川さんのおかげで、『美容バカ』はいろんな人に手にとっていただける感じになっているんじゃないかなと。

――ご自身で何か心境の変化のようなことはあったのでしょうか?